アルバ会社説明会



第13号  便 秘(その2) 便秘の漢方治療について

2002/10/21

今回は、「便秘の漢方(中医学)治療」というテ−マで便秘を東洋医学的角度から考えてみます。前回は、便秘の原因によって弛緩性・直腸性・けいれん性便秘に分類しましたが、今回は中医学的な分類方法で便秘を症状から分類していきます。実秘(腹部膨満感や腹痛をともなう便秘)と虚秘(あまり不快感をともなわない便秘)に大きく分類し、それを更に分類します 。



1.実 秘 (じっぴ)

腹部膨満感や腹痛をともなう便秘で、便の停滞によるガスの発生や自律神経系の緊張による大腸の蠕動(ぜんどう)運動の異常などが原因で、からだの機能自体は衰えていません 。

(1)腸胃積熱 (ちょういしゃくねつ)

辛辣なもの・味の濃いもの・油っこいもの・酒などの嗜好により、胃腸で軽度の炎症状態などがおこり、大腸内の水分が過剰に吸収されて便が硬くなり排便が困難になるほか、便の停滞によるガス発生・便や炎症による刺激のために、腹部膨満感や腹痛が現れます。このような症状は、発熱性疾患の経過にも同様に現れることがあります。

[症 状]
数日間の便秘・便が硬い・腹部膨満感・腹痛・臭いガスがよくでるなどのほかに、口臭・のどの渇き・冷たいものを飲みたがる・尿が濃い・舌に黄色く乾燥した苔がついているなどがみられます。

[治療法]
胃腸での熱をとり、便を軟化して排便を促します。単なる下剤で便を出すのではなく、胃腸での熱をとることによって次に便秘を起こさせないような処方を選択します。また、食生活の改善などにも気をつけましょう。

[処方例]
大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)・調胃承気湯(ちょういじょうきとう)・大承気湯(だいじょうきとう)・桃核承気湯(とうかくじょうきとう)・防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)


(2)湿熱困阻腸胃 (しつねつこんそちょうい)

飲食の不摂生・油っこいもの・消化しにくいものの嗜好・飲酒癖などが原因で、胃腸に湿熱(からだにとって不必要な熱と水分が結合して、からだの正常な機能を傷害する病態)が生じて、大腸の蠕動運動が円滑でなくなるために、排便がスム−ズにできない状態です。

[症 状]
排便したいのにうまく出ない・少量の粘稠な便あるいは泥状便・はじめ硬く後が泥状便あるいは泥状便と便秘が交互に出現する・腹部膨満感・腹のつかえなどのほか、口が粘る・吐きけ・尿が少なく濃い・からだが重だるい・舌に黄色くべっとりした苔がつくなどがみられます。

[治療法]
熱と湿を除いて胃腸の蠕動運動を正常化させ、排便をスム−ズにします。

[処方例]
茵陳蒿湯(いんちんこうとう)・木香檳榔丸(もっこうびんろうがん )


(3)肝鬱気滞 (かんうつきたい)

精神的ストレス・緊張・不安などで自律神経系が緊張するために、腸管が緊張して蠕動がスム−ズでなくなるため、排便がうまくできない状態です。けいれん性便秘に相当します。一般に最もよく用いられる刺激性下剤(便秘 その1 参照)では逆効果になることが多くあります。

[症 状]
便秘・便が細い・切れぎれの便・すっきり出ずに残る・少量しか出ないなどのように排便が不十分かつ不愉快であり、腹部膨満感・腹痛・ガスやげっぷが多い・いらいら・ゆううつ感・怒りっぽいなどをともないます。 ストレスや緊張などで増悪し、女性では月経の前にこの傾向が強くなることがよくみられます。

[治療法]
自律神経系の緊張を緩和して胃腸の機能を円滑にし、排便をスム−ズにさせます。 便秘(その1)のけいれん性便秘の解消法も参考にしてください。

[処方例]
加味逍遙散(かみしょうようさん)・四逆散(しぎゃくさん)・柴胡疏肝散(さいこそかんさん)・大柴胡湯 (だいさいことう)

 

2.虚 秘 (きょひ)

便秘をしていてもあまり不快感をともなわない便秘で、腸管全体が弛緩(しかん)し緊張が低下 して蠕動があまりおこらない病態です。弛緩性便秘(便秘その1を参照)に相当しますが、更に細かく分類し治療方法も異なっています 。

(1)気虚不運 (ききょふうん)

先天的な虚弱・慢性病・老化などにより、機能が衰えて腸管の蠕動や緊張が弱くなり腸管内の内容物の通過が遅いために便秘になり、腸管での水分の吸収も不十分ですから便は出はじめが硬くあとは軟らかいことが多いです。
一般に、西洋薬・漢方薬ともに単なる下剤は無効で、返って激しい腹痛や下痢をおこすことがあります。

[症 状]
排便が困難で、いきんだり腹を押さえたりして非常に努力がいり、排便に時間がかかりすぎて疲れ果てることもあります。便ははじめ硬いだけであとは軟らかい・疲労倦怠感・疲れやすい・元気がない・無力感・声に力がない・立ちくらみなどの症状をともないます。

[治療法]
からだ全体の元気をつけ腸管の蠕動を強め緊張を高めて、便を押し出す力を強めます。 単に下剤を使うと逆効果のことが多く、元気をつけ機能を高めるようなお薬を服用する必要があります。

[処方例]
補中益気湯(ほちゅうえっきとう) (加大黄:かだいおう)
補中益気湯はからだを元気にするお薬ですが、症状に応じて大黄(下剤)を追加して用います。


(2)陽虚寒凝 (ようきょかんぎょう)

老化や慢性病の衰弱などで機能とエネルギ−代謝(からだを温める)が衰えて、腸管の蠕動が弱くなるだけでなく冷えによって一層腸管の蠕動が弱まり、便が停滞するための便秘です 。

[症 状]
便秘とともに、冷える・寒がる・元気がない・顔色が青白い・温暖を好み寒冷をきらう・尿がうすく多い・夜間頻尿・腰や膝がだるく無力などの症状がみられます。

[治療法]
からだを温め元気をつけることが、治療の中心になります。その結果、腸管の蠕動を促し便を押し出す力を強めます。

[処方例]
温脾湯(うんぴとう)・大黄附子湯(だいおうぶしとう)


(3)陰血不足(いんけつふそく)

産後・慢性病・発熱性疾患の回復期・老化などで、栄養状態の悪化や体液の消耗にともない、腸管が滋潤されなくなり腸液の分泌も不足するので、便が硬くなり腸管内にとどまるために便秘します。

[症 状]
兎糞状のコロコロ便が特徴で、やせる・くちびるや皮膚の乾燥・皮膚の弾力性の低下・顔色につやがないなどの症状をともないます。

[治療法]
栄養や体液を補充し腸管を潤すことにより排便を促します。

[処方例]
潤腸湯(じゅんちょうとう)・麻子仁丸(ましにんがん)・五仁丸(ごにんがん)


(4)気陰不足(きいんふそく)

気虚不運・陰血不足が合わさった病態です。からだの機能が低下しているため、栄養物や体液の生成ができなくなったり、栄養物や体液の不足が続いたためにからだの機能も衰えるといったように相互関係で便秘を発生します。

[症 状]
排便が困難で便も硬く、気虚不運と陰血不足の症状をともないます。

[治療法]
からだの機能を高めて、腸管の蠕動を促し便を押し出す力を高めるとともに腸管内を滋潤して排便を促進します。

[処方例]
炙甘草湯(しゃかんぞうとう)・参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)・資生湯 (しせいとう)

 

3.まとめ

2回にわたり便秘について書きましたが、便秘は人によって個人差があり、食生活などにも気をつける必要があります。毎日気持ちよく排便をするためには、けっこう微妙な調整が必要な場合もありますので、最初は専門医に受診をして適切なお薬を処方してもらうことをお勧めします。

分 類
排便・便の状態
付随する症状
処方例




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数日間の便秘・便が硬い 口臭・のどの渇き・臭いガスがよく出る・冷たい飲み物を欲しがる・暑がり・尿が濃い 大黄甘草湯・調胃承気湯・大承気湯・ 桃核承気湯・防風通聖散
湿




排便したいのにうまく出ない・少量の粘稠な便あるいは泥状便 腹部膨満感・腹痛・口が粘る・吐きけ・尿が濃く少ない・からだが重だるい・舌に黄色くべっとりとした苔がついている 茵陳蒿湯
木香檳榔湯



便が細い・切れぎれの便・すっきり出ずに残る・少量しか出ない 腹部膨満感・腹痛・ガス・げっぷ・いらいら・ゆううつ・怒りっぽい・ストレスを受けやすい 加味逍遙散
四逆散
柴胡疏肝湯
大柴胡湯
 





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排便困難・排便に時間がかかる・ではじめは硬くあとは軟らかい 疲労倦怠・疲れやすい・元気がない・無力感・声に力がない・立ちくらみ 補中益気湯(加大黄)



冷え・寒がる・顔色が青白い・温暖をこのむ・尿が薄く多い・夜間頻尿・腰や膝がだるく無力 温脾湯
大黄附子湯



排便困難・硬い便 疲労倦怠・疲れやすい・元気がない・無力感・声に力がない・立ちくらみ・やせる・くちびるや皮膚の乾燥・顔色につやがない 炙甘草湯
参苓白朮散
資生湯



兎糞状のコロコロ便 やせる・くちびるや皮膚の乾燥・皮膚の弾力性の低下・顔色につやがない 潤腸湯
麻子仁丸
五仁丸

[参考文献]
森 雄材 著  『中医学版 家庭の医学』 (株)法研
趙 金鐸 主編 神戸中医学研究会 編訳 『中医診断と治療』 燎原書店
張 伯臾 主編  『中医内科学』  人民衛生出版社
神戸中医学研究会 編著 『方剤学』 医歯薬出版

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