アルバ会社説明会



第15号  屠 蘇 (とそ) 

2002/12/20

2002年もあと10日余りで終わろうとしています。そこで今回の「処方せん豆知識」は『屠蘇散』についてふれたいと思います。

最近では、元日に家族そろって「お屠蘇」を飲んで、「おせち」と「お雑煮」でお正月を祝う家庭も少なくなったかもしれませんが、日本古来の良き風習を思い出して「お屠蘇」でお正月を祝い、
1年の健康を祈願するのも良いのではないでしょうか。
この「処方せん豆知識」では、「お屠蘇」に使用されている生薬(漢方薬)の内容を中心に「お屠蘇」の由来や作り方などをご紹介していきます。



 屠蘇の由来

元来三国時代の名医「華陀(かだ)」という先生によって作られた処方で、元旦にこれを飲めば邪気がはらわれ1年間健康で過ごすことができると言われています。日本には平安時代に伝わったそうですが、江戸時代には武家や一般の上流階級にも取り入れられるようになったようです 。



 屠蘇に使われる生薬

華陀の作った屠蘇散には、劇薬の烏頭(ウズ、トリカブトの母根)や下剤の大黄(ダイオウ)などが 含まれていたようですが、現在の処方にはそのような作用の激しい生薬は含まれていません。 製造所によって内容にはそれぞれ若干の違いがありますが、最も代表的な処方内容について個々に解説していきます。


◇ 白 朮(ビャクジュツ)
キク科 オケラ
白 朮
キク科のオケラの周皮の皮を除いた根茎(中国では、オオバナオケラの根茎を使用)を用います。
毎年、大晦日から元旦にかけて京都の八坂神社で行われる「朮祭り(おけらまつり)」で使用されるオケラと同じ物です(けっして、昆虫ではありませんので、ご安心を)。このお祭りでは、オケラの根茎を焚き、参拝者はその火を火縄に移して火が消えないように、縄を振りながら家に持ち帰って雑煮を炊く火種にしたそうです。その雑煮で家族全員が正月を祝うと1年中流行病にかからず健康に過ごすことができると言われています。
このように、昔から邪気をはらうとされているオケラは、屠蘇散の主薬です。

〔効能〕
消化器系に働き食欲不振・腹部膨満感・疲れやすいなどの症状に朝鮮人参などと一緒に用いられます。
また、小便の出が悪くむくみや下痢をしている時にも、他の小便の出る薬とともに使用されます。


◇ 桂 皮(ケイヒ)
クスノキ科 ケイ
桂 皮
クスノキ科のケイの幹の皮を用います。漢方の世界では、一般に肉桂(ニッケイ)と呼ばれています。
皆さんもよくごぞんじのシナモンティ−に用いるシナモンのことです。シナモンティ−に用いるシナモンは桂心(ケイシン)といい、樹皮の内側だけを薄くそいで筒状に丸めた物(シナモンスティック)を用いています。お薬として使う時は、一般に幹の皮全体を用いています。その他、シナモンパウダ−は、お菓子の味付けや香り付けとして家庭でもよく使われていると思います。

〔効能〕
身体を温める作用が強く、手足の冷え・寒がる・腰や膝がだるく力が入らない・頻尿・夜間によく小便に行くなどの症状に、附子(ブシ)や熟地黄(ジュクジオウ)といった生薬と一緒に用います。 有名な処方としては八味地黄丸(ハチミジオウガン)があります。
また、ケイの枝を桂枝(ケイシ)といい、肉桂とは異なった用い方をします。桂枝は温める作用の他に汗を出す作用があり、皆さんもごぞんじの冬の風邪によく用いられる葛根湯(カッコントウ)にも葛根(クズの根)や乾姜(カンキョウ、ツチショウガを乾燥した物)とともに用いられています。

話がそれますが、葛根湯は寒邪によって身体が犯され風邪症状が出た時に用いる漢方薬です。
つまり、寒さによって引き起こされる風邪で、身体を温めて汗を出して風邪を治す薬です。夏場の風邪には返って悪くなることもありますのでご注意を!!
しかし、最近では、冷房ガンガンの事務所で働いていれば夏でも寒邪に犯されることもあるかもしれません。効能から考えると、屠蘇散には肉桂よりも桂枝の方が適していると思います。


◇ 山 椒(サンショ)
ミカン科 サンショウ
山 椒
ミカン科のサンショウやイヌザンショウなどの成熟した果実の果皮を用います。
山椒は、皆さんも大変よくごぞんじの「山椒は小粒でピリリと辛い」の山椒のことです。
日本最古の香辛料で果実だけが用いられているのではなく、3月頃から出回る山椒の新芽(木の芽)は、焼き魚や煮魚の添え物、お吸い物にも使われています。
6月末ごろになると小粒のピリリと辛い未成熟の青い果実が出回りますが、私はこの未成熟果実で作った「ちりめん山椒」が大好物です。ちなみに、「京都・はれま ちりめん山椒」は絶品です!

秋になると山椒の実が熟してはじけ、黒い実をのぞかせますが、この実を包んでいる外皮が最も香りが強く、薬用にもこの部分が使用されています。
中の黒い実は苦みがあり一般に食用には用いませんが、漢方では椒目(ショウモク)といい、小便を出す薬として使われています。
うなぎの蒲焼きにかける粉山椒も、この成熟果実の外皮だけを粉末にした物です。

〔効能〕
お腹を温める作用があり、冷えによる腹痛・下痢・消化不良などに用いられます。
また、ピリリと辛い山椒の成分は、胃腸の動きをよくするだけでなく、痛みを取る作用や駆虫薬としても使われています 。


◇ 丁 字(チョウジ)
フトモモ科 チョウジノキ
丁 字
フトモモ科のチョウジノキの花のつぼみを用います。
香辛料では、クロ−ブの名で販売されていますが、冬の寒い夜にホットウィスキ−に2〜3個入れて飲むと体が芯から温まってきます。お酒のみの方はよくご存じだと思います。

〔効能〕
お腹を温める作用と気を下に下げる作用があり、お腹が冷えて起こるシャックリや吐きけに柿のへたなどと用います。
漢方では、吐きけやシャックリは、本来、下に行かなければならない気が逆に上に上がったために起こると考えられていますので、気を下に下げる作用のある丁字がよく用いられます。
また、丁字の精油成分には殺菌作用や鎮痛・麻痺作用があり、歯の痛みを和らげる目的にも使われています。


◇ 防 風(ボウフウ)
セリ科 ボウフウ
防 風
セリ科のボウフウの根および根茎を用います。
刺身のつまとして使っているのは、浜防風(ハマボウフウ)の若葉で、この根を漢方では 北沙参(ホクシャジン)といい、効能も全く異なります。
日本では、防風と浜防風がよく混同されていますが、屠蘇散で用いる場合は、効能から考えても浜防風ではなく防風を使うのが正しいと思います。

〔効能〕
防風には、汗を出す作用があり風邪症候群によく用いられます。 その他、筋肉のひきつりや筋肉痛にも用いられます。


◇ 桔 梗(キキョウ)
キキョウ科 キキョウ
桔 梗
キキョウ科のキキョウの根を用います。観賞用として花屋さんに売っているあの桔梗と同じ物です。

〔効能〕
サポニンという痰を切り咳を止める作用がある成分が入った生薬で、漢方の風邪薬として非常によく用いられています。
その他、膿を出す作用もあり、十薬(ジュウヤク、ドクダミの全草)や甘草(カンゾウ、ウラルカンゾウなどの根)などと用います。


◇ 陳 皮(ちんぴ)
ミカン科
陳 皮
ミカン科のウンシュウミカン・オオベニミカンなどの成熟した果実の果皮を用います。
皆さんが冬になると食べているあのミカンの皮を乾燥した物です。
「陳皮」の「陳」は「古い」という意味の「陳」で、薬としては古い物ほど効果がすぐれているといわれています。
しかし、現在、市場にある陳皮にはそんなに古い物があるわけではありません。新しい物でも、効果は十分あるようですのでご安心ください。

〔効能〕
行気薬(コウキヤク)とも理気薬(リキヤク)ともいわれるお薬で、漢方では体内の「気」が停滞すると胃腸の働きが悪くなり、腹がはる・食欲がない・下痢などの症状があらわれると考えられています。
また、精神的にも情緒が不安定になり、いらいら・怒りっぽい・ゆううつ感などの症状を引き起こす場合もあります。 つまり、「行気」とは「気を行(めぐ)らす」という意味です。
陳皮はどちらかというと胃腸の気をめぐらす作用があり、腹がはる・吐きけ・下痢・食欲がない・少食などの症状に他のお薬とともに用いられます。
また、胃腸の気が停滞すると体内に痰を生成すると考えられており、痰が多い・咳が出る・胸苦しいなどの症状にも痰を溶かす作用のあるお薬とともに用いられます。


 屠蘇散の効能のまとめ

屠蘇散の原料が、比較的身近にある物ばかりなのに皆さん驚かれたのではないでしょうか。
屠蘇散の効能をまとめますと、「胃腸を健やかにして、身体を温め、風邪の予防になる」というところでしょうか。



 お屠蘇の作り方

屠蘇散1袋(通常ティ−バックになっています)を大晦日の夜、清酒約1合(180ml)に一晩浸し、お好みにより少量のみりんまたは砂糖を加えて、元旦の朝お雑煮をいただく前に年少者より順次、新年の健康と息災を祈願してお召し上がりください。


屠蘇散に使われている原料の植物と生薬の写真は、株式会社ツムラに提供して頂きました。


 ごあいさつ

平成14年度の『処方せん豆知識』も今月号で今年の最終号となりました。
アルバ薬局ホ−ムペ−ジも毎日200〜300のアクセスがあり、大変驚いています。来年も少しでも皆様のお役に立てますようスタッフ一同がんばって『処方せん豆知識』を更新して行く所存でございます。ご意見ご希望がございましたらホ−ムペ−ジ上からメ−ルを送信して頂ければ幸いです。

また、アルバ薬局グル−プでは、患者様お一人お一人の立場に立って、地域の皆様に信頼され愛される薬局をめざしスタッフ一同がんばっております。
なお、アルバ薬局グル−プではどちらの病院・診療所の処方せんも受け付けておりますので、お気軽にお立ち寄りください。

今年も残り少なくなってまいりました。皆様くれぐれもご自愛の上、よいお年をお迎えください。



株式会社ア ル バ 代表取締役 横田 裕昭

copyright(c)2006 alba-pharmacy, all right reserved.