アルバ会社説明会




第36号   前立腺肥大症

2004/09/22

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前立腺肥大症は、中年以降に多くみられる病気で、特に高齢者に多く見られます。
高齢化の進むわが国にとっては、今後ますます増加傾向にある疾患といえるでしょう。
そこで今回は、前立腺肥大症について、お話させていただきます。

 前立腺とは

前立腺は男性特有の臓器で膀胱の下部に尿道を取り巻く形で存在します。胎児のうちにできますが、発育は精巣より遅れ、精巣から分泌される男性ホルモンによって成長します。
前立腺の平均的な大きさは、成人では縦3?p・横2?pぐらいで、形も大きさも栗の実に似た器官です。重さは約10〜15gです。栗の皮に相当する部分を外線、中身に当たる部分を内線といい、その中を尿道が貫通しています。

前立腺の主な役目は、精液の液体成分の約30%を占める前立腺液を作ることだとされていますが、まだまだ不明な点が多いようです。前立腺液は、精子の活動や生存を助けるものといわれています。


 前立腺肥大症とは

前立腺で最も多い病気は、前立腺肥大症です。50歳以上では、五人に一人がかかっているといわれ、年齢が上がるにつれて、多くなります。
 
前立腺は通常は栗の実大の大きさですが、肥大してくると鶏卵大まで大きくなることもあります。大きい人では、200g以上にもなります。

◇原因

前立腺肥大症には、以下のような原因が考えられています。
1. 前立腺の細胞内には、男性ホルモンの受容体があります。前立腺は、精巣から分泌された男性ホルモンが受容体にくっつくことによって、肥大していくと言われています。しかし、男性ホルモンは50歳以上になると年齢とともに減少するので、男性ホルモンのみでは、説明がつきません。
2. 前立腺自身の炎症も肥大の原因と考えられています。何らかの原因により前立腺が炎症(慢性)を起こすと、前立腺組織内から、成長因子と呼ばれる物質が放出され、それが前立腺を肥大させるという説もあります。
3. 欧米人に比べ東洋人の方が、発症率が低いという疫学調査の結果から、動物性脂肪や蛋白質の過剰摂取に原因があるのではないかとも考えられています。
その他、生活習慣や体型などとの関係についても研究されていますが、未だにはっきりした結論は出されていません。

◇症状

前立腺肥大症の症状としては、大きく分けて二つあります。
1.閉塞症状 前立腺が肥大することにより尿道を圧迫し、トイレに行っても尿がすぐに出ない・排尿に時間がかかる・排尿の勢いが弱いなどの、尿が出にくくなる症状(閉塞症状)です。
2.刺激症状 前立腺が肥大することにより膀胱下部の筋肉(膀胱括約筋:排尿を促す筋肉)が刺激され、突然強い尿意を感じてあわててトイレに駆け込む(切迫感)・尿の回数が多くなる(頻尿)・残尿感などがこれにあたります。
◇前立腺肥大症の進み方

■ 第1期 (膀胱刺激期)
まず初期症状の特徴としては、尿の回数が多くなること(頻尿)で、特に夜間の頻尿が多く見られます。
これまでは夜間に寝ついてから目が覚めるまで尿意を起きることはなかったのに、「毎晩のように夜中に3回以上トイレに行く」ようになったら注意信号です。病気が少し進んでくると、排尿障害が感じられます。

1. 尿回数が増加。特に夜間に3回以上
2. 尿が間に合わない感じ(尿意切迫)
3. トイレにたどり着く前に尿が漏れてしまう(切迫性尿失禁)
4. 軽度の排尿困難
5. トイレに行ってもすぐに尿がでない
6. 尿をしている時間が長い

などの状態が起こります。
夜間の頻尿では、本人も同居の家族も睡眠不足になったり、日中は仕事や外出時にいつもトイレのことを気にしていることになります。また、人によっては尿意を感じてからトイレに行くまでにがまんができず、尿を漏らしてしまう(失禁)こともあるなど、日常生活に影響が出ることもあります。
命にかかわる病気ではありませんが、本人にとってはつらく、「生活の質」(Quality of Life)が低下する場合多く見られます。


■ 第2期(残尿発生期)
次の段階として、自分では完全に排尿し終わったつもりでも、実際には尿が出切らずに、膀胱に50〜100ml残ってしまうという「残尿」現象が起こってきます。そうなると膀胱が空にならないために、短時間で尿が満杯になり、昼夜の区別なく頻尿となります。

前立腺が肥大して尿道を圧迫すると、尿路抵抗が強まり、膀胱に大きな負担がかかります。このような状態が長く続くと、膀胱の筋肉が疲労してしまい、尿を出しきれなくなります。また、尿路抵抗が強くなることによって、圧迫された組織の血管が破れ、血尿を伴うこともあります。


■ 第3期(慢性尿閉塞期)

放置するとさらに病気は進み、、膀胱の筋肉が収縮力を失ってい、ついには膀胱が伸びきった、「ただの袋」のようになってしまい、尿が無意識のうちに溢れだし、絶えず尿道から流れ出してしまうようになります。腎臓から膀胱への尿の流れが障害され、腎臓の機能までもが低下してきます。最後にはまったく尿が出ない(尿閉※1)といった状態になります。

※1尿閉・・・ 膀胱に尿がたまったまま、出なくなる状態です。強い冷えやアルコ−ルの飲み過ぎ・風邪薬の服用などがきっかけとなりおこることがあります。膀胱に1000cc以上も尿がたまったまま出なくなることもあり、放っておくと危険な状態となり、すぐに膀胱にカテ−テル(細い管)を入れて、尿を出す(導尿)を行う必要があります。

国際前立腺症状スコア

IPSS(前立腺肥大症の症状に関する国際的評価方法)は、患者さん自身に排尿状態に関する症状を評価していただく方法です。各質問を読み、その回答として適当な項目の番号に丸を付けてください。そうであって欲しいという希望を答えるのではなく、現在の自覚症状・印象について率直にお答えください。最初の7項目が自覚症状に関する質問で、後半の4項目が印象に関する質問です。自覚症状(7項目)の答えの点数の合計が8点以上は排尿困難があるといえます。

 
全くなし
5回に
1回
以下
2回に
1回
以下
2回に
1回
2回に
1回
以上
ほとんどいつも
小便したあと残尿感がありますか
0
1
2
3
4
5
小便したあと2時間以内にまた小便したくなることがありますか
0
1
2
3
4
5
小便するとき小便の線が途絶することがありますか
0
1
2
3
4
5
小便を我慢できないことがありますか
0
1
2
3
4
5
小便の線が細いことがありますか
0
1
2
3
4
5
小便をし始めるときいきみますか
0
1
2
3
4
5
夜寝てから朝起きるまでに何回小便に起きますか(回数=得点)
0回
1回
2回
3回
4回
5回

《合計点数》
0〜7 正常若しくは軽症
8〜19 中等症
20〜35 重症
◇治療法

先ほどもお話したように、前立腺肥大症は排尿に関する様々な症状が起こり、本人にとっては大変つらいものです。治療の目的はつらい症状を改善し、「生活の質」(QOL)を低下させている要因を取り除くことです。しかし、その人のライフスタイルによって「生活の質」(QOL)の障害度も異なってきます。

そのため、治療法を選択するときには症状の程度だけでなく、年齢や体力・職業・病歴・家族構成など、ひとりひとりの状況を考慮して行われるようです。

基本的には、症状が軽度〜中等度の場合は薬物治療が中心となり、症状が中等度〜重症な場合や尿閉などの合併症を起こしている人は、前立腺を切除する手術をすることになります。また、手術が出来ない人や、高齢者では、肥大した部分をマイクロ波で小さくする高温度療法や、前立腺の肥大によって狭くなった尿道に、ステントと呼ばれる金属のバネを入れて広げる方法などの物理療法もあります。
◇薬物療法

前立腺肥大症によっておこる尿道閉塞には、二つのタイプがあります。
1.機能的閉塞 前立腺の筋肉(前立腺平滑筋)が、交感神経の働きによって収縮し、尿道を圧迫するタイプ。
2.機械的閉塞 前立腺そのものが大きくなって、尿道を圧迫するタイプ。

α1遮断薬

前立腺をはじめ血管や平滑筋には、交感神経伝達物質と結合することによって、これらの筋肉を収縮させるα1という受容体が広く分布します。α1遮断薬はこの受容体をブロックすることにより、前立腺の筋肉(前立腺平滑筋)の緊張をとることによって、尿道の抵抗を減らしスムーズに排尿できるようにします。「機能的閉塞」を抑える目的で用いられます。このタイプの薬には前立腺平滑筋に選択性の高い薬と、前立腺平滑筋・血管などの受容体を、わけ隔てなく遮断させる2タイプが存在します。後者では血管を拡張させる作用があるので降圧剤としても使われる場合があります。これらのくすりでは血管拡張に伴うめまいやふらつきに注意が必要です。

■前立腺選択的α1遮断薬
  塩酸タムスロシン(ハルナール)・ナフトピジル(フリバス・アビショット)
■前立腺非選択的α1遮断薬
  ウラピゾル(エブランチル)・塩酸プラゾシン(ミニプレス)・塩酸テラゾシン(ハイトラシン・バソメット)

植物エキス製剤

植物から抽出した薬物で、前立腺の重量増加を抑える効果や尿道抵抗を減少させる効果がありますが、作用のメカニズムもはっきりとはわかっておりません。α1遮断薬と併用して用いられることが多い薬で、軽症の場合は単独で使われることもあります。副作用はほとんどありませんが、胃部不快感、食欲不振などの消化器症状が起こることがあります。
セルニチンポ−レンエキス(セルニルトン)・植物エキス配合剤(エビプロスタット)


◆抗男性ホルモン薬

男性ホルモンが前立腺に取り込まれると前立腺の細胞が増殖し、肥大が進行します(機械的閉塞)。そのため、抗男性ホルモン薬で男性ホルモンの前立腺への取り込みを抑え、前立腺細胞の増殖を抑えることによって排尿障害を改善します。
これらの薬物は、前立腺以外の他の臓器に取り込まれる男性ホルモンも抑えてしまうため、長期間服用すると副作用として女性化乳房や勃起障害などが起こることがあります。また、高血糖や脂質代謝異常が現れることもあり、血糖値の高い方・高コレステロール血症の方は注意が必要です。これらの薬物の作用によってPSA※2という前立腺がんの腫瘍マーカーも下げてしまうため、服用を始める前に前立腺がんの検査を受けるようにしましょう。
酢酸クロルマジノン(プロスタール)・アリルエストレノ−ル(パーセリン)

※2PSA・・・ 前立腺の細胞だけが分泌するタンパク質のひとつです。前立腺に腫瘍があると、血液中のPSAの値が高くなることから『腫瘍マ−カ−』と言われています。

抗コリン薬

初期の前立腺肥大症で夜間の頻尿が気になる場合には、緊張を和らげることで、尿意をがまんできるように、抗コリン薬を用います。トイレの回数を減らし尿失禁を抑えます。
塩酸プロピベリン(バップフォー)・塩酸オキシブチニン(ポラキス)

 日常生活の注意点

日常生活では刺激の強い香辛料や、動物性タンパクや脂肪は控えるほうがよいと言われています。長時間のドライブなど、長時間座ったままの姿勢を続けると、骨盤内の血流が悪くなり前立腺が充血して尿道への圧迫が強くなるので、注意が必要です。また、便秘をさけるため繊維質のものを多くと取ったり、血行をよくするために運動をしたり、風呂にゆっくりつかることも大切です。
たびたびトイレにいくのが気になるから・・・といって水分をとるのを制限すると、尿の出が少なくなり、老廃物が十分に排出されず、腎機能が低下して尿毒症の原因にもなります。一日最低でも、1リットルの水分をとるようにしましょう。

 その他の注意点

薬の作用や副作用によっては、前立腺肥大症の症状を悪化させることがありますので、医療機関を受診する場合や薬局で薬を購入する場合は、必ず前立腺肥大症であることを医師や薬剤師に伝えるようにしましょう。
市販の風邪薬や鼻炎の薬の中にも、前立腺肥大症の症状を悪化させる成分が含まれているものがあります。

 まとめ

排尿異常の原因には、前立腺肥大だけでなく、膀胱炎や糖尿病・前立腺がん・あるいは神経の異常などがあります。
また、前立腺肥大症も多くの病気と同じように、早期治療が大切です。
「年だからしかたない…」「面倒くさい…」「泌尿器科に行くのは恥ずかしい…」などと、受診を一日延ばしにしていると、症状はますます悪化して、治療期間もそれだけ長くなります。
病気を見逃さないためにも、症状の程度を客観的に評価する『国際前立腺症状スコア』が役立ちます。50歳を過ぎたら、定期的に自己チェックをしてください。ただ、この数字が低かったからと安心はせず、『そういえば最近トイレに行く回数が増えたな…』と感じたら、一日も早く専門医を受診するようにしましょう。


アルバ薬局 みてじま店  薬剤師 宮下 等 



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