アルバ会社説明会




第40号    近年再びクロ−ズアップされている『結核』について

2005/1/24

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昨年、NHK大河ドラマの『新撰組』でも話題を呼んだ沖田総司といえば、労咳(ろうがい)を患う薄幸の剣士と言うイメージがありますが、労咳とは今で言う肺結核のことで、当時は不治の病と恐れられていました。

今では大半の方が、「結核は昔の病気で、いまではかかることのない病気だ。」と思っていらっしゃるのではないでしょうか。かつて、大正時代から昭和20年代までの永い間、「国民病」「亡国病」と恐れられ、当時は年間死亡者数も10数万人に及び死亡原因の第一位でした。その後、医療や生活水準の向上のおかげで、結核があたかも滅亡されたように思われてきました。

しかし、今でも1日に97人の新しい患者が発生し、6人が命を落としている我が国最大の感染症なのです。平成15年、我が国で結核にかかっている人の割合は、人口10万人中約3万5千人で、罹患率は27.9%と先進国中最も蔓延しています。その中でも、特に70歳以上の高齢者の患者が多いことが目につきます。

〈沖田総司〉


 国内の結核の現状(平成15年)

新規登録患者数(新たに結核と診断され登録された患者) 35,489人 罹患率27.9%
喀痰塗抹陽性患者数(痰の中に菌が発見される患者) 12,656人 罹患率9.9%
結核死亡数 2,488人 死亡率2.0%

罹患率:1年間に新たに結核を発病した人を、人口10万対率であらわしたもの
死亡率:1年間に結核で死亡した人を、人口10万対率であらわしたもの

〈厚生労働省資料より〉


 結核とはどんな病気なのでしょうか

結核とは、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる感染症のことです。結核菌は、1882年に細菌学者としてノーベル賞を受賞したロベルト・コッホにより発見されました。結核菌は、人の体内でも体外でも長時間生き延びることができ、乾燥にも強く、菌が裸になっても生き延びることができるので、空気感染をおこします。

結核は、以前『肺病』と呼ばれていたことからわかるように、結核の80%は肺結核です。しかし、結核菌は肺の病巣からリンパの流れ・血液の流れにのり、また、気管・気管支・食道・胃・腸・尿管などの管を通って全身に運ばれ、どの臓器でも結核になる可能性があります。結核性リンパ節炎(とくに多いのが首の脇が腫れるもので、昔は「るいれき」と呼ばれていました)・結核性胸膜炎(ロクマクと呼ばれる)・咽頭結核・腸結核・腎臓結核・皮膚結核・結核性髄膜炎・骨結核(カリエスと呼ばれる)などがあります。このような、肺以外の結核を総称して、『肺外結核』と呼んでいます。頻度はそれほど多くはありませんが、結核は全身病という認識をもってください。

 感染経路

結核感染はほぼ100%結核菌を吸入しておこる『吸入感染』です。
結核患者が咳やくしゃみをした時に飛び散る「しぶき」を直接吸い込んでも感染(飛沫感染)しません。しぶきが空気中に放出されると、粘液の水分が急速に失われ、結核菌はほとんど裸の状態の「飛沫核」となります。「飛沫核」はとても軽いので、何時間も空気中に漂い、それを肺の奥深く吸いこんだ人が結核に感染します。(空気感染)

結核菌は乾燥に強く、空気中を漂っている間に死んでしまうことはなく、空気の流れに乗って、思わぬ遠いところにいる人が感染することもあります。しかし、普通は「話をする程度の距離」で感染源(患者)と接触した場合に感染することが多いようです。
また、一度床や衣服などに付着した菌が再び舞い上がったものを吸入しても、感染すること(塵埃感染)はなく 食器や衣類などを介して結核がうつることはありません。
 発病

結核に感染すると、肺の中に小さな病巣ができますが、この病巣自体は比較的治りやすく、そのまま悪くなって結核になることはあまり多くありません。 
結核に感染しても、80%くらいの人は発病せず、一生を無事に送ることができます。
ところが、自分でも気づかないうちにできた小さな病巣の中に閉じこめられた結核菌は、体に免疫力がある間は、増殖はできませんが生き延びています。そして、なんらかの理由で体の抵抗力が落ちると、閉じこめられていた結核菌が増殖を始め、感染後20年・30年たってから発病するということがおきます。つまり一度感染すれば、一生の間発病の危険性があるということです。

 症状

結核はかなり進行してこないと自覚症状は現れません。結核初期の症状は、かぜとよく似た症状が現れます。そのため、発見が遅れてしまうことがしばしばあります。2週間以上も微熱や咳・痰が止まらない時は注意が必要です。病気が進むと全身が倦怠感(だるさ)に襲われたり、寝汗・胸の痛みなどの症状が現れます。さらに病状が進んでくると血痰がでたり、喀血したりします。
高齢者では、咳・痰・血痰・胸痛などの呼吸器症状がでにくく、発熱・全身倦怠・食欲不振・寝汗・体重減少などの全身症状のみでも、結核を疑う必要があります。
 予防

◇ツベルクリン反応検査
ツベルクリン反応は、結核菌に対する人体のアレルギー反応を利用して結核菌感染の有無を知ろうという検査です。結核菌に感染すると、発病する・しないにかかわらず、人体には結核に対する免疫、つまり抵抗力ができます。このような人に結核菌のある成分を注射しますと、人体は結核菌が侵入したと思って反応を起こします。これを皮膚で起こさせたのがツベルクリン反応です。

アレルギーのある人、つまり結核に感染したことのある人では徐々に注射部位が赤く腫れ、しこりが触れるようになり、2日目に最も強くなります。発赤径が10mm以上を陽性、9mm以下を陰性としています。 アレルギーのない人、つまり結核菌に感染したことのない人ではほとんど反応はありません。このように結核のアレルギー反応を利用して、結核菌に感染したか否かを判別することができるのです。ただし、結核に感染していなくても下記に述べるBCG摂取をうけていれば、同様の反応がでます。この反応がBCGによるものか、結核菌の感染によるものかは、特別の場合を除いて区別できません。

◇BCG
毒力を非常に弱めた牛型結核菌で、これをつくったフランス人、カルメットとゲランの二人の名前をとり、BCG(カルメットとゲランの菌の意味)とよんでいます。BCGは弱毒生菌で、菌が生きていないと免疫がつきません。日本では、BCGをぬった皮膚に9本の針のついた管針を2回押しつけて接種する、経皮接種法で接種しています。

軽い結核のような反応を局所に起こさせておき、本当の結核菌が後からきた場合に対抗する免疫をつけておく、というのがBCG接種です。 BCGは特に子供の結核の予防に有効なことが証明され、しかも最も安全な予防接種として世界で広く用いられています。BCGによって乳幼児の重症な結核を8〜9割防ぐことができます。免疫効果は10〜15年といわれています。

平成17年4月からの新たな結核予防制度の実施に伴って、BCG接種の対象が、従来の「4歳に達するまで」から「生後6カ月に達するまで、これができない場合には1歳に達するまで」の子どもたち、に変わります。
これはBCG接種がより効果的なものになるように、生後のできるだけ早い時期に接種することをねらったためです。

 治療方法

病気を完全に治療するためには体力を強めて結核菌に打ち勝たなければなりません。体力を強めるためには、『安静・栄養・新鮮な大気』の3つに重点をおいた大気安静療養が古くから行われています。空気が清浄なところで療法するのがいいとされていたためで、結核療養所の多くが山の中や郊外等、都市部から離れたところにありました。

その後、昭和30年代は肺の一部を切除する外科療法が最も盛んに行われていましたが、現在では化学療法がもっとも重要で欠くことができません。最近は良く効く薬が開発され、治療を始めると、咳や痰の症状は、1〜2ヶ月で消え、空洞や排菌がある場合でも、6〜12ヶ月間きちんと薬を飲めば、ほぼ確実に治すことができます。このため、治療期間は昔と比べて大幅に短縮されています。

抗結核薬

1944年にストレプトマイシンが開発されてから続々と抗結核薬が開発され、今では10種類以上の抗結核薬があります。このため、結核の治療は昔とは比べものにならないほど進化しました。とりわけ、殺菌力の強いリファンピシンが開発されてから、治療成績は、また一段とよくなりました。
平成16年6月には、『結核医療の基準』が一部改正され、同年7月1日から適用されています。

化学療法の初回治療
■A法
イソニアジド・リファンピシン・ピラジナミドに硫酸ストレプトマシシン・またはエタンブトールの4剤併用療法を2ヶ月行い、その後、イソニアジド・リファンピシンの2剤併用療法または、イソニアジド・リファンピシン・エタンブトールの3剤併用療法を4ヶ月行います。

■B法
イソニアジド・リファンピシンの2剤に、硫酸ストレプトマシシン・またはエタンブトールを加えた3剤併用療法を6月間行いその後、イソニアジド・リファンピシンの2剤併用療法または、イソニアジド・リファンピシン・エタンブトールの3剤併用療法を3ヶ月行います。

原則としてA法を用いますが、ピラジナミドが投与できない場合に限り、B法を用います。

主な抗結核薬

◇イソニアジド(INH)
抗菌力が強く、殺菌的に作用します。通常は、リファンピシンなど他の抗結核薬と併用しますが、結核感染が強く疑われた場合の、発病予防薬として単独で用いることもあります。(※化学予防)

※ 化学予防 ・・・ ツベルクリン反応を行った場合に、水疱ができたり、出血するほど反応が激しい場合などは、後になって発病する確率が高いので、薬を服用して発病を予防することが望まれます。これが、化学予防とか予防投薬とよばれているものです。
イソニアジドを6ヶ月毎日服用して、発病を防ぎます。6ヶ月間頑張って服用すれば、おそらく一生の間、発病率は半分以下になると考えられています。
 副作用としては、末梢神経炎(手足のしびれ)がありますが、ビタミンB6を併用することで予防できます。その他、発疹やめまい・貧血・肝障害の副作用もみられます。
   

◇リファンピシン(RFP)
結核菌を殺菌する強い作用があります。この薬の開発により、短期間で結核を治せるようになりました。結核のほか、ハンセン病の治療にも使用します。
副作用はあまりありませんが、人によっては発疹や発熱がみられます。また、胃腸障害がある場合は、朝食前の服用を朝食後に変更することで改善することもありますので、主治医に相談して下さい。
薬の色により、尿・便・唾液・汗・涙などがオレンジ色に着色しますが、心配はいりません。ソフトコンタクトレンズが変色することがありますので、ソフトレンズ使用の場合は、事前に医師と相談してください。

◇塩酸エタンブトール(EB)
抗菌力が強く、他の薬が無効な場合でも効果を発揮します。
副作用としては、視力障害があります。霧がかかったように見えたり、見えにくくなったり、色がおかしく見えるなどの視力の異常に気づいたら、ただちに主治医に申し出て下さい。毎朝、新聞を片目ずつ一定の距離で読むなどして、視力の状態をチェックしてください。

◇ピラジナミド(PZA)
抗菌力はあまり強くありませんが、病巣内に潜んで生き残っている結核菌にも有効です。
肝障害の副作用がやや多いですので、肝障害を思わせる症状(悪心・嘔吐・極度の食欲不振・全身倦怠感)が出現したときは、すぐに主治医に相談するようにしてください。

◇硫酸ストレプトマイシン(SM)
病巣内に潜んでいる結核菌にも強い効果を発揮します。
副作用としては、いわゆるストマイ難聴が知られています。その他、頭痛やめまいを起こしたり、腎臓が悪くなることがあります。

◇パラアミノサリチル酸カルシウム(PAS)
通称“パス”と呼ばれる古くからある抗結核薬です。結核菌に対し静菌的に作用します。効果はあまり強くありません。
副作用としては、食欲不振・吐き気・下痢などの胃腸障害があります。

◇サイクロセリン(CS)
抗生物質の仲間で、結核菌に抗菌力を発揮します。通常、他の抗結核薬の効き目が悪いときに追加して用います。
副作用としては、頭痛・めまい・記憶が減退・眠気などの精神神経症状の発生頻度が高いと報告されています。多くはありませんが、けいれん発作・精神錯乱・てんかん様発作などの重い症状を引き起こすことがあります。酒量の多い人・腎臓の悪い人・また高齢の人などとくに注意が必要です。手足のふるえや筋肉のひきつり、また精神的な変調を感じたら、すぐ医師に連絡してください。

結核の治療で大切なことは、「決められた薬を毎日のむ」ことです。不規則な服薬や、症状がなくなったからといって自分勝手に薬の分量を減らしたりやめたりすると、薬に対して結核菌に耐性ができ、薬が効かなくなってしまうことがあります。こうして、一度効かなくなってしまうと、もとにはもどりません。決められた全ての薬を必ず飲むことが必要です。

治療終了後の注意

以前に比べ、再発を恐れて消極的に生活するなどという必要はなくなりました。最近では、再発率は5年で2%くらいといわれています。不幸にして、もし再発してもほとんどの場合、前と同じ薬で治せます。もしも、咳・痰・熱が続いたりする場合は、ためらわずに、以前かかっていた医療機関を訪ね、検査をしてもらいましょう。
 結核の公費負担制度

結核は継続して治療が必要な病気です。安心して治療が受けられるように、結核医療費公費負担制度(結核予防法)により、治療費の一部(または全額)が公費により負担されます。
詳しくは、最寄りの保健所にお問い合わせください。


 まとめ

結核は、過去の病気と思い込み、症状が現れていても本人も医師も気づかず、受診や診断が遅れ、集団感染をおこす事例が増えています。
咳や痰が2週間以上続けば要注意です。1ヶ月以上続く人からは25人に1人の割合で結核がみつかると言われています。もちろん、咳や痰は風邪・気管支喘息・慢性気管支炎・肺がんなどでもおこります。いつもより咳や痰が長引いておかしいなと思ったときは、早めに医療機関を受診しましょう。また、定期的に健康診断や結核検診(レントゲン検診)を受けていれば安心です。


相生薬局 管理薬剤師  堀内 郁夫 




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