アルバ会社説明会





第44号 うつ病について

2005/5/27

目次:
※ご覧になる項目を上の目次よりお選び下さい。



今回の処方せん豆知識は、ストレス社会が生み出す現代病ともいわれる「うつ病」について取り上げます。


 1.「うつ病」って?

 仕事が上手くいかない・上司にしかられた・恋人とけんかをした・家族関係がぎくしゃくしているなど、私たちはストレスに囲まれながら生活をしています。

たいていの場合は、スポーツで汗を流す・好きな映画を見る・友達と話をするなどの気分転換をすることによって「落ち込み」から解放され、「明日からまたがんばろう」という気持ちがわいてきます。

しかし、「落ち込み」からなかなか回復せず、いつまでも気分がゆううつで元気が出ない状態が続く場合があります。このような状態を「うつ状態」といいます。
通常、2週間以上「うつ状態」が続くと、「自分はダメな人間だ・・・・・」「生きている意味がない・・・・・」などと考えるようになり、物事が決められない・自分で判断して実行できないなどのように、日常生活に支障をきたすようになります。これが「うつ病」です。

つまり、うつ病とは人間が本来持っている「生きるための活力」がなくなり、それに伴って意欲や行動も低下する「心の病」です。また、肩こり・不眠・全身がだるい・頭痛などさまざまな身体的症状を伴うことも少なくありません。


 2.うつ病の症状

 うつ病は、青年期から高齢者まで、どの年代でも発症する可能性があります。特に、男性では働き盛りで責任が重くなる30代、女性では結婚適齢期といわれる20代と更年期と重なる40代に発症しやすいといわれています。
 うつ病では、精神症状と身体症状があり、様々な症状が現れます。このような症状は、朝から午前中にかけて強く出ることが多いといわれています。


◇ 精神症状
感情面の症状: いつもゆううつ・不安で仕方がない・イライラすることが多い・全て自分が原因だと思ってしまう・自分に自信がなくなる・言いたいことが言えない・異性に対して興味がなくなるなど。
思考面の症状: 判断ができない・考えることができない・何事も悪い方向に考える・集中できないなど。
意欲面の症状: 気力がなくなる・何をするにも億劫になる・何に対しても興味がわかず楽しめないなど。
◇ 身体症状
感情面の症状: 早朝に目が覚める・毎晩よく眠れない・食欲がなく食べ物を美味しく感じない・体重の増減が激しい・だるい・肩こり・頭が重い・頭が痛い・胸やけがする・便秘がちなど。

 3.うつ病のタイプについて

◇ 仮面うつ病
 心の症状はそれほど目立たず、眠れない・食欲がない・疲れがとれない・肩こり・頭痛・めまいがするなどの身体の症状が主に出てきます。ゆううつな気分はあまり自覚しないために、うつ病とわかりにくいことが特徴です。

◇ 老人性うつ病
 高齢者では、体の衰えにともない、配偶者や親しい人を失ったり、病気にかかる・引っ越しをするなどの環境の変化をきっかけとして精神活動全般が不活発となり、うつ病を発症することがよくあるといわれています。
暗く沈んでいることが多く、物覚えが悪くなったといった不安感や焦燥感が強く出たり、眠れない・食欲がない・疲れがとれない・めまいがするなどの体の不調が起こります。精神症状以外に体の不調を訴えることが多いため、体の病気として取り扱われることがあり、うつ病を見逃してしまうことがあるので注意が必要です。

◇ 躁うつ病
 愉快でそうかい快な気分が続く「そう状態」と、ゆううつな気分が続く「うつ状態」を繰り返します。
躁うつ病といっても、その2/3は、うつ状態を呈するものです。躁とうつを循環する型は1/3程度で、躁症状だけを呈するものは3%程度といわれています。
◇ 女性のうつ病
 女性ホルンモンと関係している女性のうつ病は、男性に比べて2倍ともいわれています。女性特有のストレスを感じやすい月経前・妊娠・出産・子育・更年期には、特に症状が出やすくなります。
・月経前うつ病
月経の10日前くらいから、イライラ・落ちつかない・怒こりっぽいなどを呈します。
・産後うつ病
産後2〜3週間以降にイライラ・落ちつかないなどの精神症状があらわれます。また、体のだるさや頭痛などの体の症状だけが強くあらわれることもあります。
・更年期うつ病
閉経前後、卵巣機能の低下によって女性ホルモン分泌量が減少するため、動悸・イライラ・便秘などの症状とともに、ゆううつになったり落ち込んだりと気持ちのムラが現れます。

4.うつ病になりやすいタイプの人

真面目で几帳面・完璧主義で責任感の強い人は、確かに周りから頼りにされ、社会的にも信頼のおける人と受け取られています。しかし、このようなタイプの人は、ストレスをためやすく、心身に無理をかけやすいため、「うつ」におちいりやすいというリスクを持ってい人が多いようです。

■まずは、症状をチェックしてみましょう。
気分が晴れず、職場や学校へ行くのがおっくう はい いいえ
毎朝読んでいた新聞が読みたくない はい いいえ
お化粧や洋服に関心がなくなった はい いいえ
誰とも話したくない はい いいえ
自分が他人からどう見られているか気になる はい いいえ
何となく体がだるい はい いいえ
食欲がない はい いいえ
何もかも自分の責任で毎日がくらい感じがする はい いいえ
どうしようもなく不安でイライラする はい いいえ
いつも熟睡できず、毎日頭がボーッとしている はい いいえ
いっそ死んでしまいたいと思うこともある はい いいえ
(旭化成ファーマ「こころの回復手帳」より)

「はい」と答えた数が多いほどうつ病の可能性が高いと考えられますが、少ないからといってうつ病ではないともいえません。
気になる事があれば、早めに専門医に受診しましょう。

5.うつ病の原因

うつ病は、脳の一部が一過性の機能障害におちいった状態ですが、この原因としては、まだはっきりとはわかっていません。
ただひとつの要因だけではなく、いくつもの要因(うつ病になりやすい性格・環境の変化・ストレスなど)が重なりあい、脳内の化学伝達物質である「セロトニン」「ノルアドレナリン」の働きが低下することで「うつ病」が起こるものと考えられています。

◇「セロトニン」と「ノルアドレナリン」について

私たちの脳内には、多くの「神経伝達物質」が存在し、互いに協力し合って体の機能を正常に保ち、心や体に活力を与え、健康を保っています。
しかし、この「神経伝達物質」が何らかの原因で少なくなってしまったり、うまく働かなくなったりすると、「うつ症状」が出てくるといわれています。
この脳内で働く神経伝達物質の代表的なものが、「セロトニン」と「ノルアドレナリン」です。

「セロトニン」は、必須アミノ酸であるトリプトファンの代謝過程で作られます。脳内の神経伝達物質であるドーパミン(喜び・快楽)、ノルアドレナリン(恐れ・驚き)などの情報伝達物質をコントロールし、心の高ぶりを鎮め、気持ちを落ちつかせる働きがあります。
セロトニンが不足すると感情にブレーキがかかりにくくなりキレやすくなったり、快楽から抜け出せずに依存症に陥ったりするといわれています。

「ノルアドレナリン」は、神経を興奮させる神経伝達物質です。不安や恐怖を引き起こす・覚醒させる・集中力や記憶力を高める・積極性を持たせる・痛みを感じなくするなどの様々な働きがあります。ストレスとの関係も深く、敵(ストレッサー)に出会ったときに分泌され、交感神経を活性化して血圧や心拍数を高める働きがあります。

6.うつ病は治るのでしょうか?

うつ病は、専門医に受診して正しい診断と適切な治療が行われれば、ほとんどが治る病気です。決して「気の持ちよう」ではなく、きちんと診察を受けて治療をすることが、回復への一番の近道です。

治療の基本は薬(抗うつ薬)を決められたとおりに飲むことと、休養をとることです。
ここでは、薬の働きについて詳しく紹介していきます。

 薬を使用する目的は、不足した「セロトニン」や「ノルアドレナリン」を脳内に増やし、体の機能を正常に保てるように補助をすることです。昔から使われている「三環系」「四環系」といわれる薬剤は、これらの神経終末への取り込みを抑え、セロトニンやノルアドレナリンの量を増やして効果を発揮するといわれています。しかし、セロトニンやノルアドレナリンが働く受容体だけでなく、他の受容体にも働くために眠気や口の渇きなどの副作用も知られています。
 現在は、図に示すように、セロトニンやノルアドレナリンの取り込みを選択的に抑え、脳内にセロトニンを増やす薬剤が主流になってきています。


提供:グラクソ・スミスクライン株式会社

SSRI: Selective Serotonin Reuptake Inhibitorsの略で、新世代の抗うつ剤の一群を指す





代表的な薬剤 特徴




塩酸イミプラミン
(トフラニールなど)
長い期間飲み続けても、薬の効果が弱くなったり、癖になったりすることはないといわれています。ただし、心臓や血管にお薬が働くことがあり、心臓に疾患がある方は注意が必要です。また、口が渇いたり便秘になることがあります。
塩酸クロミプラミン
(アナフラニール)
塩酸アミトリプチリン
(トリプタノールなど)




アモキサピン
(アモキサン)
薬の効きめは速く現れ、口が渇いたりすることも比較的少ないのが特徴です。



塩酸マプロチリン
(ルジオミールなど)
三環系に比べて、心臓や血管にお薬が働いて、心臓がドキドキしたり、心電図への影響は起こりにくいといわれています。
塩酸ミアンセリン
(テトラミド)
SSRI マレイン酸フルボキサミン
(デプロメール
ルボックス)
塩酸パロキセチン(パキシル)
SSRIと呼ばれています。SSRIとは、「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」の略で、セロトニンの取り込みを選択的に抑えて、セロトン量を増や増やします。
不安をやわらげる働きもあります。
SNRI 塩酸ミルナシプラン
(トレドミン)
SNRIと呼ばれています。SNRIとは、「セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬」の略で、セロトニンとノルアドレナリンの取り込みを抑えて、量を増やします。

三環系薬剤は、「アセチルコリン」という体の中で働く物質を抑えてしまうことで、口が渇いたり、便秘や尿が出にくくなります。
四環系抗うつ薬は三環系に比べると副作用が少ないのが特徴です。
SSRIは、うつ病の原因と考えられているセロトニンにのみに働くので、三環系や四環系薬剤に見られる副作用は少ないといわれています。飲み始めに吐き気・嘔吐・胃もたれなどが強く現れることがありますが、根気よく飲み続けていれば、自然に気にならなくなるケースが多く、勝手に中止しないことが大切です。
SNRIはうつ病の原因と考えられているセロトニンとノルアドレナリンの両方に働きます。

◇薬剤服用時の注意点

「うつの状態」は、症状が重くなったり軽くなったりを繰り返しながら、時間の経過とともに治癒していきます。「うつ病」は治る病気ですが、症状が軽くなったからといって勝手に飲んでいる薬を止めたり、逆に薬を増やしたりすると副作用が起こりやすくなるばかりだけでなく、せっかく回復に向かっている症状が悪化したり、治療開始時よりも更にひどいうつの症状になってしまったりします。
また、かぜ薬などと違い、薬の効果が現れるまでには時間がかかります。医師の指示に従って、薬の量と飲む時間をきちんと守り、薬を飲み続けることが大切です。


 7.うつ病患者さんとの接し方

 うつ症状に悩む方は、それでなくても自分を責めたり、わかっていてもできないという状況に嫌気がさしながら、自分ではどうしようもなく苦しんでいます。「うつ」を克服するためには、周りのサポートが一番の治療薬となるのです。


無理に運動や外出・旅行などをすすめることはやめましょう。


「ガンバレ」や「気の持ちよう」という言葉は、反対に追い詰めることになります。
本人は、頑張らなくてはいけないことをよく知っているのですが、それができなくて苦しんでいるのです。このような言葉は、「自分が悪いんだ」と更に患者さんを追いつめることになります。

 追いつめずに、温かい目で見守ってあげることが必要です。


こうすればいい、ああすればいいと自分の意見を押しつけないようにしましょう。
本人の意思を尊重することが大切です。

 8.精油の効果〜うつ〜

香りは、脳に直接働きかけて、高ぶった神経を鎮めたり、やる気を出させたり、不安な気持ちをやわらげることが知られています。
最近は、エッセンシャルオイルも手に入りやすくなり、アロマテラピーが一段と身近になりました。
気分が沈んでいるとき・不安なとき・眠りにくいときなどに、上手に香りを利用して気持ちのコントロールをすることができたら、とても素敵だと思いませんか?

うつに対して伝統的に用いられるエッセンシャルオイル

イランイラン お花の甘い香り
オレンジスイート オレンジのフレッシュな香り
カモミール・ローマン りんごを思わせる甘い香り
グレープフルーツ グレープフルーツのさっぱりとした香り
サンダルウッド ウッディな香り
ゼラニウム お花の甘い香り
ネロリ お花のサッパリとした香り
フランキンセンス スパイシーな樹脂の香り
ベルガモット 柑橘系のさっぱりとした香り
ラベンダー お花の甘い香り
レモングラス レモン調の草木の香り
ローズオットー バラの甘い香り
ローズウッド バラに似たウッディな香り

ここにあげたエッセンシャルオイルは、代表的なものです。また、1つの精油だけを使うのではなく、何種類かをブレンドするとよいでしょう。

アロマテラピーを行うときには、自分の好きな香りを選ぶことが大切です。
あまり好きな香りではないものを無理して使ってもかえってストレスのもとになります。

◇アロマテラピーの方法
<芳香浴>
・ティッシュやハンカチを使って、精油を1〜2滴落とし枕元などに置く
・精油1〜5滴を、アロマランプの水を張った上皿に落とす

お休み前に使用するときは、火を用いるアロマランプは避け、ティッシュなどを用いるようにしましょう

<入 浴>
ぬるめのお湯にゆっくりと入浴することは、緊張をほぐすのに役立ち、心身ともリラックスさせることができます。
血行がよくなり身体があたたまることも、眠りに入るために大切です。


全身浴: ぬるめのお湯に5滴以下の精油を入れ、よくかき混ぜてから入浴しましょう。
精油は水に溶けにくいので、5mlくらいの植物油か天然塩に溶かしてから加えるとよいでしょう。

半身浴: みぞおちまでつかるくらいのお湯を張り、3滴以下の精油を入れて入浴しましょう
上半身が冷えないようにタオルなどを羽織って、汗が十分出るまでつかるとよいでしょう。


<トリートメント>
不眠の主な原因ともいえる、不安や緊張・ストレスを和らげるために、マッサージが役立ちます。鎮静作用のある精油を用いることでさらにリラックスすることができるでしょう。
キャリアオイルに精油を1%以下になるように加えてブレンドオイルを作ります。
気になるところに塗り、やさしくマッサージしましょう。
使用前には必ずパッチテストをしましょう。
柑橘系の精油には光毒性のあるものがあります。使用後、日光にあたるときは注意が必要です。

パッチテスト: 使用するブレンドオイル1滴を腕の内側に塗り、数時間〜24時間ぐらい放置して、様子をみて下さい。

たとえば、不眠といっても一時的なものもあれば、長期的なものもあります。
長期間にわたって精油を使う場合は、同じ精油を使い続けると、 身体や心がその香りや精油に慣れてしまい、最初に使ったときほど長く眠れなかったり、よいと感じなくなることがあります。
このような場合には、体が慣れてしまわないように、違う精油を試してみたり、いくつか組み合わせて使ってみるのもよいでしょう。

アロマテラピーを試す方法には色々あります。
また、香りもさまざまです。
自分にあった精油を探して試してみて下さい。
なお、当薬局におきましてもアロマテラピ−関連商品を取り扱っていますので、お気軽にお問い合わせください。

参考文献

こころのくすり箱 (グラクソ・スミスクライン株式会社)
うつ病患者さんに対する接し方 (旭化成ファーマ)
あなたの心はお元気ですか? (フジサワ)
うつ病の早期発見のために (旭化成ファーマ)


アルバ薬局 三宮店
薬剤師 児玉 亜弓
薬剤師 新堂 泰子(精油とアロマテラピーについて)




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