アルバ会社説明会



第47号 高血圧 その2(薬物療法

2005/8/26

目次:
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高血圧 その2 (薬物療法)
前回の処方せん豆知識では、高血圧の診断方法・治療法・食事や生活での注意点などについて全般に渡ってご紹介いたしました。
高血圧その1でもご紹介しましたように、高血圧の治療法には、食事療法・運動療法・薬物療法があります。今回の処方せん豆知識では、高血圧の治療に使われるお薬についてとりあげます。

「2次性高血圧」は、腎臓病・内分泌疾患・薬物などが原因で高血圧を起こします。つまり、高血圧を起こす原因がはっきりしていますので、その原因となる疾患を治療することや原因を除去することにより、高血圧が完治する場合があります。もちろん、高血圧の原因が分かっても、全ての高血圧が完治するとは限りません。
一方、「本態性高血圧(原因がわからない高血圧)」では、食事や運動によって、血圧が過度に上がらない体質を作ることが第一です。
前回ご説明したように、医師の指示に従い、食事の内容を見直したり、適度な運動をしながら、血圧のコントロ−ルを目指します。それでも、血圧が下がらない場合には、お薬の出番となります。

このように、生活習慣を見直しながら、不十分な部分をお薬で補い、血圧が上がりにくい体質にしていくことが高血圧の治療では大切です。

高血圧の薬といっても、数多くのお薬があります。皆様の中には、血圧の薬を飲んでいても「血圧が安定しているからもう止めてもいいかな?」と思っている方もいらっしゃるでしょう。また、何種類かの血圧のお薬を飲んでいて「同じお薬なのに大丈夫かしら?」とお思いの方もいるかもしれません。
血圧のお薬はそれぞれ、どのような特徴を持っているのでしょうか。

 1.高血圧治療薬の分類と主な薬剤

 現在、高血圧の治療に使われるお薬は、大きく分けると下の表のように分類されます。
基本的には、血圧の上がり方や合併症から1種類のお薬を選んで治療を始めますが、血圧の下がり方が不十分な場合には、働きの違ういくつかのお薬を組み合わせて、よりよい血圧コントロ−ルを目指します。
数種のお薬を組み合わせることは、1種類のお薬の量を増やすことに比べて、血圧を下げる効果がより高まるだけでなく、副作用を出にくくするという利点もあります。

薬剤の分類 薬剤名(主な商品名)
1. Ca拮抗薬
(カルシウム拮抗薬)
アダラ−ト・アダラ−トL・アテレック・アムロジン・カルスロット・コニ−ル・ニバジ−ル・ノルバスク・バイロテンシン・ペルジピン・ヘルベッサ−など
2. 利尿薬 アルダクトンA・ダイア−ト・バイカロン・フルイトラン・ラシックスなど
3. β遮断薬 ア−チスト・アルマ−ル・インデラル・セレクト−ル・セロケン・テノ−ミン・メインテ−ト・ベトリロ−ルL・ロプレソ−ルなど
4. α遮断薬 カルデナリン・デタント−ル・ミニプレスなど
5. ACEI
(アンジオテンシン
変換酵素阻害薬)
エ−スコ−ル・ゼストリル・セタプリル・タナトリル・チバセン・レニベ−スなど
6. AII拮抗薬
(アンジオテンシン
受容体拮抗薬)
オルメテック・ディオバン・ニュ−ロタン・ブロプレス・ミカルディスなど

 2.各薬剤の働きと特徴

1.カルシウム拮抗薬
骨を丈夫にするために、カルシウムは大切なミネラルです。
体の中のカルシウムのうち、約99%は骨に含まれ、体を支える役割をしています。
残りの約1%は、血液中に存在し、筋肉を動かす・神経をスム−ズに働かせる・ホルモンの分泌を正常にするなど、人間のあらゆる生命活動に関わっています。この生命活動の中で、血管を拡張したり、収縮したりするのにも一役買っているミネラルです。
カルシウムイオンが細胞の中に流入すると筋肉が収縮します。カルシウム拮抗薬はカルシウムイオンの流入を選択的に抑制して、筋肉の収縮を妨げます。これが血管の筋肉(血管平滑筋)で生じると血管は拡張して血圧は下がります。
カルシウム拮抗薬は、カルシウムイオンの細胞内の流入を抑制するからといって、骨がもろくなるなんてことはありませんのでご安心ください。

「持続性カルシウム拮抗薬」と呼ばれる、効果が長く続くお薬では、1日1回飲むだけで1日の血圧がコントロ−ルでき、大変服用しやすくなっています。

また、動脈硬化症(血管の壁にコレステロ−ルなどがへばりつき、血管が狭く、ぼろぼろになる状態)が進むのを抑えることも期待されています。

〔特 徴〕
☆確実に血圧を下げる働きがあります。
☆脳や肝臓・腎臓・末梢の血液の流れを良好に保ちます。
☆動脈硬化が進むのを抑える働きがあるといわれています。

〔主な副作用〕
○脈が速くなったり、動悸がする
一部のお薬では、末梢の血管がひろがることによる反射で脈が速くなることがあります。
○便 秘
消化器系の平滑筋にも働き、消化管の運動を抑えるため、便秘や胃腸障害を起こすことがあります。
○顔面紅潮・頭痛・熱感
血管拡張作用のため

◇カルシウム拮抗薬とグレ−プフル−ツジュ−ス
カルシウム拮抗薬とグレ−プフル−ツジュ−スをいっしょにとると、降圧効果が増大して血圧が下がりすぎることがあります。

これはグレ−プフル−ツに含まれるフロクマリン誘導体の一種が、薬を代謝する酵素の働きを弱めてしまうことが原因で、薬の効き目が強くでてしまうことがあり、頭痛・顔面紅潮・動悸などの副作用が増加しやすくなります。
この作用は、グレ−プフル−ツだけでなく、スウィ−ティ−・だいだい(サワ−オレンジ)でも、同様の現象が現れる可能性があります。また、オレンジ・温州みかん・レモン・夏みかん・かぼすなどは、このような作用がないといわれています。
各個人の体質によって個人差がありますので、グレ−プフル−ツが大好きな方は、医師にそのことを伝えるようにしてください。
 
※飲み合わせが問題のないお薬もあります。詳しくは薬剤師におたずね下さい。

2.利尿薬
食塩(ナトリウム)を多くとりすぎると、体は体液の塩分濃度を一定に保とうとして、水分をよけいに取り込みます。その結果、組織中の水分が血液に流れ込んで循環血液量が多くなって血圧を上げます。

利尿薬は、その名の通り尿を出すお薬です。腎臓でナトリウムが再び取り込まれるのを抑えて、体内のナトリウムと水分を尿として体の外に出し、体液の量(血液量)を減らして、むくみをとったり血圧を下げたりする働きがあります。

利尿薬は、大きく分けて次の3つに分類されます。

◇サイアザイド系利尿薬
利尿作用(むくみを取る働き)は穏やかであり、主に血圧を下げることを目的として使われます。

主な薬剤:フルイトラン・ナトリックス・バイカロン

◇ル−プ利尿薬
強力な利尿作用を持ちますが、降圧効果はあまり強くありません。特に、心臓や腎臓の働きが低下し、むくみなどがある場合によいとされています。

主な薬剤:ラシックス・オイテンシン




◇カリウム保持性利尿薬
おだやかな働きを持ち、他の利尿薬と併用して使用することが多いお薬です。心不全の症状の悪化を防ぐといわれています。

主な薬剤:アルダクトンA

カリウム保持性利尿薬以外は、一般的には効き目が早く現れ、飲んでから1時間程度でトイレに行きたくなります。また、長い間飲んでいると、カリウムが不足することがあるため、積極的に柑橘類・野菜類を摂るようにしましょう。

〔サイアザイド系利尿薬・ル−プ系利尿薬の主な副作用〕
○低カリウム血症
動悸・筋力の低下・だるいなどの症状が現れます。

○糖尿病を悪化させることがある
長期の服用により、血糖値が上昇することがあります。原因としては、低カリウム血症によるインスリンの分泌の低下などが考えられています。
カリウムが減るのを防ぐために、カリウム保持性利尿薬(体内のカリウムを上げる)や、カリウム製剤を一緒に飲む場合もあります。

○高尿酸血症・高脂血症を悪化させることがある
代謝系に影響を及ぼすため、血液中の尿酸や血清脂質の量を増やすことがあります。

3.β遮断薬
「受容体」という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか?
少し難しくなりますが、人間の生命活動には、体の中の様々なミネラル・ビタミン・ホルモンなどが協力して働いています。
あらゆるところに働きかけるものもあるし、特定の部位にしか働かないものもあります。
これらの物質が働きかける特定の部位を「受容体」と呼んでいます。

それでは、血圧に関係している「受容体」にはどのようなものがあるのでしょう。
心臓や血管も自律神経によって、血圧や脈拍等を調節しています。自律神経は交感神経と副交感神経よりなり、それぞれの器官の受容体を介して、一方が興奮的に働けば、他方は抑制的に働き、正常機能を維持しています。また、交感神経は活動時に、副交感神経は安静時に主に働きます。

心臓、血管と自律神経 交感神経 副交感神経
心拍数 速くする 遅くする
心臓の収縮力 強める 弱める
血管の緊張 血管収縮 血管拡張(一過性)

交感神経という、人間の体を興奮させる神経は、アドレナリンやノルアドレナリンといった交感神経を活発にするホルモンの働きにより、血管を収縮したり、心臓の心拍数を早めたりします。

心臓には、「β受容体」と呼ばれる受容体があり、これらのホルモンがβ受容体に結合すると、心臓の働きが活発になり、脈は速くなり、心臓がドキドキしてきます。
β遮断薬は、心臓の働きを活発にするこれらのホルモンが、「β受容体」に結びつくのを抑えること(遮断)で過剰な心臓の働きを抑えます。脈の乱れを整えたり、心臓の働きをゆっくりにして血圧を下げます。狭心症など心臓に疾患がある方にとっては心臓を休ませることになるので、好都合なお薬といえるでしょう。

しかし、「β受容体」には、「β1受容体」と「β2受容体」の2種類があります。β1受容体は主に心臓や血管に存在し、β2受容体は主に気管支に存在します。気管支のβ2受容体に、交感神経を活発にするホルモンが結合すると、気管支はひろがり、呼吸を促します。逆に、β2受容体を遮断すると気管支喘息の発作が誘発される場合がありますので、気管支喘息の方は通常服用することができません。

この他、糖尿病の方で低血糖症状が起こった場合には、β遮断薬によって低血糖の症状(動悸・手の震えなど)がかくれてしまうため、低血糖に気づきにくくなります。

〔主な副作用〕
○気管支喘息の発作を誘発する可能性があります
気管支喘息の方は、通常服用できません。
○徐脈(じょみゃく)・心不全
脈が遅くなりますので、もともと徐脈(脈拍数が少ない)の方は、服用できません。
また、以前は心不全の方には、使用することができませんでしたが、最近ではβ遮断薬による心不全の治療も行われています。

〔注意事項〕
○糖尿病がある場合は、低血糖症状に気づきにくくなりますので注意が必要です。
低血糖に伴う、動悸・手の震えなどの交感神経の症状をかくしたり、低血糖からの回復を遅らせることがあるため、糖尿病の治療中の方は注意が必要です。

4.α遮断薬
β遮断薬で、「受容体」について説明いたしました。β遮断薬は心臓の「β1受容体」に働き、心臓の働きを抑えるお薬でしたね。では、α遮断薬にはどのような働きがあるのでしょうか。

動脈の血管には、「α受容体」というアドレナリン・ノルアドレナリンといった交感神経を活発にするホルモンが働く部位があり、これらのホルモンがα受容体に結合すると、血管が収縮し血圧は高くなります。

α遮断薬は、血管の収縮を活発にするこれらのホルモンが「α受容体」に結びつくのを抑えること(遮断)で、血管をひろげ血圧を下げる働きがあります。

また、糖尿病や高脂血症に対しても良い効果を持つといわれています。

高齢の男性では、前立腺が大きくなると尿道を圧迫し、尿が出づらくなることがあります。
前立腺にも、「α受容体」が存在していて、α遮断薬は、尿道の周りの筋肉をほぐし、尿道をゆるめることで、尿の流れをスム−ズにする働きもあります。

〔特 徴〕
糖・脂質代謝を改善することが期待されます。
前立腺肥大に伴う、排尿困難を改善します。(一部の薬は、前立腺肥大の治療薬として認められています。)

〔主な副作用〕
○めまい・ふらつき
高所作業や車の運転等、危険を伴う機械の操作にはご注意ください。

5.ACE阻害薬:ACEI(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)
血圧は、生体内の様々な物質やホルモンにより調節されています。腎臓で産生されたレニンは肝臓でできたアンジオテンシノ−ゲンに作用してアンジオテンシンIを産生します。アンジオテンシンIはアンジオテンシン変換酵素(ACE)によりアンジオテンシンIIに変換されます。アンジオテンシンIIは非常に強力な血圧を上げる物質であり、このアンジオテンシンIIができないようにすれば、血圧が下げられるということになります。つまり、ACE阻害薬はアンジオテンシンIをアンジオテンシンIIに換える時に関与するアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害することにより、血圧を下げます。同時に、ACE阻害薬は、血圧を下げる作用のあるブラジキニンがアンジオテンシン変換酵素(ACE)によって不活性物質に分解される過程も阻害するので、ブラジキニンの量が増加し、血圧を下げます。しかし、ブラジキニンは咳を誘発する物質でもあり、体内にブラジキニンが増加することにより咳が出ることがあります。

〔レニン・アンジオテンシン系の仕組み〕



〔主な副作用〕
○空咳
ブラジキニンが増加することにより、空咳が出ます。咳の特徴としては、痰が出ない・喉のいがらっぽい感じがある・持続性である・睡眠中に増悪する傾向があるなど。

6.ARB:AII拮抗薬(アンジオテンシン受容体拮抗薬)
アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)そのものには影響せず、アンジオテンシンIIがその受容体にくっつくのを阻害することによって血圧を下げます。アンジオテンシンIIの受容体には1型受容体(血圧を上げる)と2型受容体(血圧を下げる)があり、1型受容体との結合を選択的に阻害することにより血圧を下げます。レニン・アンジオテンシン系の仕組み参照。

〔主な特徴〕
ACE阻害薬の特徴的な副作用である空咳がほとんど生じません。
血圧を下げる作用は、緩やかですが確実な効果があります。

3.まとめ

今回は、高血圧の治療薬を取り上げました。
血圧が高い状態が続くと、血管に負担がかかり、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気に
なる危険性が高まります。
しかし、血圧が高い状態であっても、風邪などと違ってほとんどは症状がなく、高血圧の薬を飲んで血圧をコントロ−ルすることは、ご自身の強い意思が大切です。
現在、高血圧治療薬として使用されているお薬は、安全性も高く、長い間服用することで心臓や腎臓の保護、動脈硬化の予防といった効果が期待されるお薬もあります。また、指示された飲み方と違った飲み方をしたり、勝手に止めてしまうことで、思いもよらない副作用が起こることもあります。
私達薬剤師は、患者様が安全に、安心してお薬をお飲みになり、健康的な生活を送るための
お手伝いができることを心から願っております。
お薬を飲むことに不安を感じたり、疑問を感じることがあれば、どうぞお気軽にご相談下さい。

アルバ薬局 兵庫駅前店
管理薬剤師 桾本 愛子




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