アルバ会社説明会



第49号 喘息(ぜんそく)のはなし

2005/10/25

目次:

※ご覧になる項目を上の目次よりお選び下さい。


喘息(ぜんそく)の話

喘息は、古くからある病気ですが、その治療方法はなかなか定まりませんでした。しかし現在では、厚生労働省免疫・アレルギー研究班による「喘息予防・管理ガイドライン」や世界の治療ガイドラインも定まり、治療方法が確立した病気となりました。
疫学的な調査によると、日本の人口の3%(360万人)が喘息患者だという研究結果も出ています。また、年間4,000人の死亡例が報告されており、死に至る可能性のある疾患です。
近年では、小児喘息の低年齢化が進み、乳幼児期に喘息が発病する子どもが増加しているとも報告されています。小児喘息は、成長するにつれて自然に治るケースが多いことはよく知られていますが、中学生・高校生になっても小児喘息が治らず、思春期喘息に移行するケースも増加しています。
また、成人が喘息にかかると慢性疾患となることが多く、完治することは難しい疾患です。しかし、患者さん自身が積極的に治療に取り組むことによって、ほとんどの喘息はコントロールでき、健康な人と同じような生活を送ることが十分可能です。
今回は、喘息の患者さんも、そうでない健康な方にも、喘息に関する正しい知識とその治療法の重要性を理解し、喘息を上手にコントロールすることによって、充実した毎日を送って頂くために、喘息という病気について簡潔にその要点をご紹介します。



◆“喘息”とは

喘息は、空気の通り道である「気道(気管支)」の慢性炎症性疾患です。この炎症により、気道の収縮や粘膜の腫れが生じてたくさんの痰が分泌され、気道が狭くなり呼吸のたびにヒュ−ヒュ−・ゼイゼイ(喘鳴)と聞こえ、呼吸が苦しくなる「発作」を繰り返す病気です。発作があるときは、大変苦しいのですが、初期のうちは、この発作は自然もしくは治療によっておさまります。いったん発作がなくなると、まったく症状がなく、一見すると健康な人と見分けがつかなくなります。気管支に慢性の炎症が起こっており、気管支が異常に過敏になっている状態ですので、アレルギ−・感染・運動・ある種の薬などがきっかけとなって喘息発作を起こします。「喘息発作は経験した者でないと、その苦しさと不思議さはわからない」というほど苦しいものだそうです。


☆ぜんそく患者さんの気道の状態☆

●気道の炎症
アレルゲンなどの刺激により、発作が現れていないときでも慢性的に炎症を起こしています。

●気道過敏性の増加
気道粘膜の表面の細胞も炎症を起こしているため、刺激に対する防御機能が低下し、少しの刺激に対しても過敏に反応してしまいます。

●気道の狭窄(きょうさく)
気道の周りの筋肉が収縮するため、気道がせまくなります。また、痰や気道の腫れも、狭窄の原因となります。


〔発病の経緯〕

●小児喘息の場合
 初めのうちは、カゼをひいたときに咳が長引いたり、ヒューヒューと呼吸にともなって音が聞こえることが多いようです。
カゼをひくたびにこのような症状を繰り返しているうちに、カゼをひいていないのにヒューヒューと呼吸にともなって音が聞こえるようになったり、咳がでやすくなったり、運動をすると同じようにヒューヒューと音が聞こえ咳がでて、苦しくなることがおこるようになります。このような場合は、喘息が疑われます。
 また、小児喘息の患者さんでは90%以上がアトピー体質(※1)を持っているといわれており、環境性のアレルゲンの吸入によって喘息発作が誘発されます。

※1アトピ−体質
 ダニ・ハウスダスト・動物の毛・フケ・カビ・花粉などの環境性のアレルゲンに対して即時型アレルギー反応を起こすIgE抗体をつくる体質です。日本人のアトピー体質は、年齢が低いほど高率といわれています。

●成人喘息の場合
成人喘息の患者さんの発病経過は、次の三つのグループに分類されます。
(1) 小児喘息・思春期喘息を経て、成人期まで継続して喘息を持ち越す。
(2) 小児喘息が治って、成人期になって再発する。
(3) 成人になってから突然、喘息を発症する。

◆喘息を起こす危険因子

喘息の危険因子は、その発症に関わる因子と症状を増悪させる喘息増悪因子に分けられます。

1.発症に関わる因子

A. 素 因(遺伝的なもの)
アトピ−・アレルギ−

B. 原因因子(喘息発症の重要な要因)
室内アレルゲン(室内塵ダニ・動物アレルゲン・カビ類)・屋外アレルゲン(花粉・カビ類・昆虫類)・アスピリン(NSAIDs)・職業性感作物質
NSAIDs:非ステロイド性抗炎症薬

C. 寄与因子(喘息発症の可能性を高める、あるいは素因自体を増大させる可能性のある因子)
食事・大気汚染(屋外汚染物質・室内汚染物質)・喫煙(受動喫煙・能動喫煙)・寄生虫感染

2.喘息増悪因子

アレルゲン・呼吸器感染・運動と過換気・気象・二酸化硫黄・食品(食品添加物・アルコール)・薬物(アスピリンなどのNSAIDs・βブロッカー)・心理的ストレス・過労・月経


一般臨床医のためのEBMに基づい喘息治療ガイドライン2004より

◆喘息治療の目標

喘息の治療目標は、健康な人と同じような日常生活が送れるようにして、喘息死が起こらないようにすることです。喘息は慢性の疾患であり、現在の進歩した医学でも、喘息を完全に治すことは難しいと考えられています(とくに成人喘息の場合)。しかし、ほとんどの喘息はコントロールすることが可能です。
喘息は、うまくコントロールすればQOL(生活の質)を高め、健康な人と同じように生活し、社会活動をすることが可能です。つまり、「喘息は治すよりもコントロールする疾患」なのです。
喘息をうまくコントロールするためには、症状が軽快・消失したからといって自分の判断で勝手にくすりを中止しないことです。医師の指示に従って"長期にわたって管理する"という心構えが大切です。




☆成人喘息の治療目標

健常人と変わらない日常生活が送れる
健常人に近い肺機能を維持できること(ピ−クフロ−値の1日変動が20%以内)
喘息発作が起こらないこと
治療薬による副作用がないこと

☆小児喘息の治療目標

保育園・幼稚園・学校を欠席しないこと
スポ−ツも含め日常生活を普通に過ごせる
昼夜を通じて症状がない
肺機能がほぼ正常
ピ−クフロ−値が安定している
発作止めの薬の使用が少なくなるか、必要としない


◆自分の喘息について知る方法

自分の喘息の程度を自分自身で簡単に知る方法として、ピークフロー値を測定したり、喘息日記をつけたりする方法があります。患者さん自身が自分の喘息の状態を知り、喘息を自己管理することも大変重要です。

■ピークフロー値

ピークフロー値とは、思い切り深く息を吸い込んだ状態から、勢いよく吐き出した息の最大速度(最大呼気速度)のことです。ピ−クフロ−メ−タ−という簡単な器具を使って測定した値(ピークフロー値)は、喘息の状態を「症状」という主観的な尺度ではなく、客観的な数値(リットル/分)で表してくれるものです。
喘息発作が起きたときに気管支は、気道の収縮や粘膜の浮腫、分泌物の増加などを来たし、このピークフローは普段に比べ低下してしまいます。つまり、ピークフローは気管支の状態を表しているということです。

■測定の仕方

1. 毎日一定時刻(たとえば朝9時と夜9時、起床時と就寝時等)に測定する。
2. 3回の測定結果の内の最大値を記録する。例えば、朝9時の測定値が300・310・280であれば、喘息日記には「310」と記録する。
3. ピークフロー値には、年齢・性別・身長によって割り出した「標準値」があります。
「ゾーン管理」では、ピークフロー値が自分の「標準値」または「自己ベスト値」に対してどのくらいの割合かによって、「今日は、ふだんの薬で大丈夫だな」とか、「今日はちょっと安静にしていた方がいいな」等を判断します。
4. 割合を出すときには、一般的に「自己ベスト」が「標準値」よりも低いときには「標準値」を基準とし、「自己ベスト値」が「標準値」よりも高い場合は、「自己ベスト値」を基準にします。
 ピークフローを測定して喘息の状態を知り、それに応じた対応をすることを喘息管理のためのゾーン・システムといいます。(下表参照)
治療の目的はピークフロー値がつねに最高値の80%以上、変動率が20%未満にあることです。

  ピークフロー値 状態
グリーン
ゾーン
自己ベストまたは標準値の80〜100%
現在の治療がうまく行っており、発作の危険はほとんどありません。
イエロー
ゾーン
自己ベストまたは標準値の60〜80%
注意です。
安静を心がけたり、医師に示されたアクションプラン(治療計画)に基づいて、治療を強化したりします。
レッド
ゾーン
自己ベストまたは標準値の60%以下
危険な状態です。
なるべく早く、病院を受診します。

5. ピークフローの変化は非常に敏感で、自覚症状の乏しい喘息発作でもピークフローに変化が現れることがあります。また、その日内変動は喘息のコントロールの指標とされ、変動が大きい場合はコントロールが不良であると考えられることからも、喘息患者さんにおいて、ピークフロー値を知ることは治療を行ううえでたいへん意義のあることです。

◆喘息の重症度

成人喘息の重症度 (喘息予防・管理ガイドライン2003年より)

重症度 症状の特徴 PEF、FEV1.0
ステップ1
軽症間欠型
●症状が週1回未満
●症状は軽度で短い
●夜間症状は月に1〜2回
予測値の80%以上
変動20%未満、あるいは
PEF自己最良値の80%以上
ステップ2
軽症持続型
症状は週1回以上、しかし毎日ではない
日常生活や睡眠が妨げられることがある
月1回以上
夜間症状が月2回以上
予測値の80%以上
変動20〜30%、あるいは
PEF自己最良値の80%以上
ステップ3
中等症持続型
症状が毎日ある
短時間作用性吸入β2刺激薬頓用がほとんど毎日必要
日常生活や睡眠が妨げられる:週1回以上
夜間症状が週1回以上
予測値の60〜80%
変動30%以上、あるいは
PEF自己最良値の60〜80%以上
ステップ4
重症持続型
●治療下でもしばしば増悪
●症状が毎日
●日常生活に制限
●しばしば夜間症状
予測値の60%未満
変動30%以上あるいは
PEF自己最良値の60%未満

肺機能 (PEF:ピークフロー、FEV1.0:1秒率)


小児喘息の重症度 (小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2002年より)

治療ステップと発作型分類

治療ステップ 発作型分類 症状程度ならびに頻度
ステップ1
間欠型
年に数回、季節性に咳嗽・軽度喘鳴が出現する
時に呼吸困難を伴うこともあるが、β2刺激薬の頓用で短期間で症状は改善し持続しない
ステップ2
軽症持続型
咳嗽、軽度喘鳴が1回/月以上、1回/週未満
時に呼吸困難を伴うが持続は短く、日常生活が障害されることは少ない
ステップ3
中等症持続型
咳嗽、軽度喘鳴が1回/週以上。毎日は持続しない
時に中・大発作となり日常生活が障害されることがある
ステップ4-1 重症持続型 1
咳嗽、軽度喘鳴が毎日持続する
週1〜2回、中・大発作となり日常生活や睡眠が障害される
ステップ4-2 重症持続型 2
重症持続型 1に相当する治療を行っても症状が持続する
しばしば夜間の中・大発作で時間外受診し、入退院を繰り返し、日常生活が制限される

◆喘息の薬物療法

喘息の治療には、長期管理薬(コントロ−ラ:発作を未然に防ぐために症状がなくても継続的に使用する薬)と、発作治療薬(リリ−バ:喘息発作が起きたとき、あるいは起きそうなときだけに使用する薬)2種類があります。普段から気道の炎症をおさえる薬と、発作時に症状を鎮める薬を並行して使用することで、喘息の悪循環を断ち切ります。
長期管理薬の継続的な使用は、炎症悪化→気道過敏性が増加→刺激→発作→炎症悪化→・・・・・・・・という悪循環を断ち切ることが目的です。気道の炎症を抑え、発作を起こさないようにすることが治療の基本になります。つまり、長期管理薬は症状がないときにも使用しなければならない薬ということです。
下表に、喘息の治療薬をご紹介しますが、喘息の重症度によって用い方が異なりますので、主治医の指示に従うようにしてください。

治療の分類 薬物の種類 作用の仕方 主な商品名 使用方法
長期
管理薬

気道の炎症を改善する
(コントローラー)
吸入ステロイド薬 気道に対する抗炎症作用・抗アレルギー作用により、喘息の悪化を防ぎます。 アルデシン・フルタイド・ベコタイド 吸入







化学伝達物質
遊離抑制薬
アレルギー反応を起こす体内の化学伝達物質が遊離されるのを抑え、症状を軽減します。 インタール 吸入
アレギサール・ケタス・ソルファ・リザベン
ヒスタミン拮抗薬 肥満細胞から遊離したヒスタミンによって引き起こされるアレルギー症状を軽減します。 アゼプチン・アレジオン・ザジテン・ゼスラン・ニポラジン 内服
トロンボキサン
合成酵素阻害薬
アレルギー反応を起こすトロンボキサンが体内で合成されるのを阻害します。 ドメナン・ベガ 内服
トロンボキサン
拮抗薬
トロンボキサンによって引き起こされるアレルギー症状を軽減します。 バイナス・ブロニカ 内服
ロイコトリエン
拮抗薬
体内の免疫反応によるアレルギー反応を抑えます。 アコレート・オノン・キプレス・シングレア 内服
Th-2サイトカイン
阻害薬
体内の免疫反応によるアレルギー症状を抑えます。 アイピーディ 内服
長時間作用性β2刺激薬 狭くなった気管支を広げることにより、気道を広くして空気の通りを良くします。 スピロペント・ベロテック・メプチン 内服
ホクナリンテープ 貼付
キサンチン誘導体 気管支を広げ、気道の粘液分泌を高め、アレルギー反応を弱めることで発作を予防します。 スロービット・テオドール・テオロング・ユニフィル 内服
発作
治療薬

発作を速やかに抑える
(リリーバー)
ステロイド薬 速やかに気管支の炎症を鎮めます。 プレドニン・リンデロン 内服
短時間作用性β2刺激薬 交感神経を刺激することによって速やかに気管支を広げ、発作を鎮めます。
発作の始まりや発作がひどくなる前に吸入すると効果的です。
アロテック・ブリカニール・ベネトリン 内服
アロテックエロゾル・
サンタノール
インヘメプチエンエアー
吸入
抗コリン薬 気管支を収縮させる力を抑え、気管支を広げます。 ロベント・フルブロン 吸入

◆日常生活での注意点

喘息の増悪因子でもご紹介したように、喘息発作はさまざまな原因で起こります。発作を起こさないためには、発作のないときに発作を起こしにくくするための長期管理薬を医師の指示通り使用し、発作の原因になるような条件を出来るだけ遠ざけるようにすることが大切です。

1. 本人も家族も禁煙する

タバコの煙は、気道に刺激を与え、咳や痰を増やして発作を起こしやすくします。

2. 原則としてペットを飼わない

動物の毛やフケはアレルゲンになりますので、屋外で飼育する・こまめにシャンプーをするなどの工夫をしましょう。

3. お酒はひかえる

アルコールの代謝物のアセトアルデヒドは、一定量を超えると喘息症状を引き起こす原因になります。

4. 食べ過ぎに注意する

食べ過ぎにより、気道を圧迫して狭くし、呼吸が苦しくなります。特に、夕食に注意しましょう。

5. 急な温度変化に注意する

室内外で5℃以上の温度差で発作が起きやすいといわれています。自宅での冷暖房のかけすぎにも注意しましょう。例えば、夏でも映画館やデ−パ−トなどのような冷房のよく効いているところに行く場合は、上着を持参するようにしましょう。

6. 過労・ストレスを避ける

過労やストレスは、喘息を増悪させる原因になりますので、注意しましょう。

7. 部屋をこまめに掃除する

アレルゲンの一因であるハウスダストを取り除きましょう。

8. 布団をこまめに干す

ダニやホコリも気道を刺激し、発作を起こしやすくします。

9. カゼを予防する

カゼをひくと喘息の症状も悪化します。手洗い・うがいをこまめにしましょう。

10. 軽い運動を継続して行う

運動は心肺機能を高め、からだ全体の機能を向上させるため、喘息を起こりにくくします。

11. 薬をきちんと服用する

発作が出ないようにするために、症状がなくても医師の指示どおりに普段から規則正しく薬を服用することが大切です。

12. 定期的に通院する

発作の頻度や症状の変化、ピークフロー値などを医師に伝え、適切な薬の量を処方していただくために、定期的に通院しましょう。

13. 規則正しい生活をする

ごはんをしっかり食べて栄養をつけ、夜はぐっすりと眠むり休息もしっかりとりましょう。生活のリズムを乱さないことで発作が起こりにくくなります。

まとめ

今回の処方せん豆知識では、喘息の症状や治療についてお話しましたが、ご理解いただけましたでしょうか?現代人は、ストレスや排気ガス・アレルゲン等と喘息の引き金となるさまざまな要素にさらされています。誰もが喘息になる可能性がありますが、喘息にかかってもきちんとコントロールし、健康な人と同じ生活を送っていただければと思います。また、心臓の病気や慢性気管支炎などでも、呼吸のたびにヒュ−ヒュ−・ゼイゼイ(喘鳴)と聞こえる場合があり、喘息とは区別されています。おかしいなと思ったら、自己判断せず医師の診断を受けるようにしてください。

アルバ薬局 新長田店
薬剤師 竹野 有希




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