アルバ会社説明会



第61号 胃食道逆流症の話し

2006/11/13

目次:

※ご覧になる項目を上の目次よりお選び下さい。


“胃食道逆流症の話し”

今月のまめ知識は、「胃食道逆流症(いしょくどうぎゃくりゅうしょう)」についてお話しします。
胃食道逆流症なんて聞いたことがない、という方が多いかもしれませんね。
「胃食道逆流症」は、欧米に比べると日本では少ない疾患でした。
しかし、食生活の変化やストレスの増加・人口の高齢化などに伴い、近年日本でも増えてきている疾患の一つです。



◇ 胃食道逆流症とは

胃食道逆流症の自覚症状として、最も多いのが胸やけです。胸やけなどの症状が見られた場合、内視鏡検査を行い食道の下部にただれなどの粘膜障害があれば逆流性食道炎(ぎゃくりゅうせいしょくどうえん)と診断していましたが、30〜40%の割合で粘膜障害が認められないことが分かってきました。そのため、最近では、食道炎の有無に関わらず食道内への胃酸などの胃内容物逆流による症状があれば、胃食道逆流症というようになりました。

では、なぜ逆流がおこるのでしょうか?
逆流がおこると症状が出るのはどうしてでしょうか?


本題に入っていく前に、まずは簡単に、食道と胃の役割についてお話しします。



◇ 食道の役割

食道は、咽頭から胃までをつなぐ約25cmの管状の臓器で、食べ物をのどから胃へ送る働きをしています。食道を通り胃に食物が運ばれるのは、食道の蠕動(ぜんどう)運動によるものです。蠕動運動とは、物を飲み込むことにより、まず食道の上部が収縮し胃に向かって順次伝わっていき、内容物を絞り出すように胃に送り込む働きのことをいいます。例えるならば、チューブに入った歯磨き粉の中身を絞り出す時のような動きが、食べ物が食道を通過する時に自動的に起こっているのです。食道と胃のつなぎ目(「噴門(ふんもん)」と呼ばれます)には、下部括約筋(かぶかつやくきん:LES)と呼ばれる輪状の筋肉があります。下部括約筋(LES)は、食物が食道から胃に入る時や、げっぷなどを出すときだけ弛緩(しかん:「ゆるむ」こと)し、それ以外の時は常に強く収縮しており、胃内容物が食道に逆流しないようにしています。


◇ 胃の役割

胃は、みぞおちの辺りにある袋状の臓器で、アルファベットのJの形をしています。食べ物が入ると1.5〜2リットルくらいまで広がります。胃は、ある程度の消化も行いますが本格的な消化は小腸で行われます。胃の主な働きには以下のようなものがあります。

胃液と食物を混ぜる。小腸での消化・吸収に備え、胃液と食物を混ぜ合わせて、栄養として吸収しやすいような粥状にして消化を助ける働きをします。

食物を一時的に蓄える。胃で粥状となった食物は、小腸の入り口である十二指腸へ送られます。十二指腸は胃のように食物を蓄えておくことができません。そのため、胃は、食物を一時的に蓄えて、十二指腸の消化の進み具合に合わせて、少しずつ食物を送り出しています。

食物の殺菌。食物の腐敗を防ぐために、胃酸の力で食物を殺菌します。

アルコールの吸収。アルコールの一部は、胃粘膜から直接吸収されます。

温度調節。熱いものや冷たいものの温度を胃液で調節しています。


次に、上記の「胃の役割」の項目でも出てきた“胃液”についてもお話しします。


◇ 胃液とは

胃液とは、胃壁中にある胃腺から分泌される消化液のことです。胃に食物が入ると、「胃液」が分泌され、食物と混ぜ合わせられて粥状となり吸収されやすい形になって食物の消化を助けます。胃液の分泌量は、だいたい1日2〜3リットルといわれています。胃液の主な成分は、胃酸・ペプシン・胃粘液です。

<胃 酸> 
塩酸であるため強力な酸性を示します。殺菌力が強く、胃内容物の腐敗や発酵を防ぎます。また、食物繊維をやわらかくする働きもあります。

<ペプシン>
食物のたんぱく質を分解する消化酵素です。胃腺中では、不活性なペプシノーゲンとして存在していますが、胃酸の働きにより活性化されてペプシンとなります。

<胃粘液>
胃粘膜表面に壁を作り、胃粘膜を守ります。強酸性の胃酸によっても、胃が自己消化されてしまうことがないのは、胃粘液により保護されているからです。

食道の役割・胃の役割・胃液についてお話をしたところで、そろそろ本題に入っていくことにしましょう。
胃液に含まれる胃酸が強力な酸性であることはすでに述べましたが、それに対して、食道は中性に保たれています。胃は、胃粘膜の働きによって胃酸から守られていますが、食道には胃酸を防御する働きがないため、食道に胃液が逆流すると、食道の粘膜は傷つけられやすくなり炎症も起こりやすくなります。

では、胃液の逆流はどうしておこるのでしょうか?



◇ 胃食道逆流症の原因

原因は一つではなく、いくつかの原因が重なって起こります。

1. 逆流防止機能の低下
先に述べたように、食道と胃のつなぎ目にある下部括約筋(LES)の働きによって、胃内容物が食道に逆流しないようなしくみになっています。しかし、この逆流防止機能がうまく働かないと、胃内容物が食道へ逆流してしまいます。
加齢と共に、下部括約筋(LES)の機能の低下が見られたり、胃の手術などで形態が変わることも原因の一つです。

2. 食道の蠕動(ぜんどう)運動が悪い
食道の蠕動運動が悪いと、食道へ逆流した胃酸や胃の内容物が食道内に長くとどまることとなり、胃食道逆流症が発症しやすくなります。

3. 腹圧の上昇
肥満やベルトなどでお腹をしめつけたりすると、お腹を圧迫し腹部の内圧が高くなり、胃の内容物は食道に逆流しやすくなります。

4. 食べ過ぎ
食べ過ぎは胃の働きを悪くするだけでなく、胃の入り口の「噴門」が開きやすくなり、胃の内容物が食道に逆流しやすくなります。

5. 胃酸分泌の増加
胃酸の分泌が増えると、胃酸の逆流が起こったときに食道粘膜が傷つけられやすくなります。

では、逆流により、どのような症状が現われるのでしょうか?



◇ 胃食道逆流症の症状

胸やけ。もっとも多く見られる典型的な自覚症状です。胸が焼けつくような感じ、ちりちりとした痛みなどと表現する場合も多いようです。











げっぷ。

口の中が酸っぱい・苦い。

食べ物が胸につかえる感じがする。

のどの不快感(のどがイガイガする)。

声がかれる。

胃もたれ。



咳がつづく。

胸の痛み。



◇ 胃食道逆流症の診断

胃食道逆流症は特徴的な症状があるため、普通は詳しい検査を行わなくとも問診にて治療を始めることが多いようです。ただし、診断が確定できない場合には、詳しい検査も行います。検査には、以下のようなものがあります。

<内視鏡検査>
逆流による食道の炎症を診ることができます。

<X線検査>
バリウムを飲み横になり、頭部を低くして、バリウムが食道に逆流するかを観察します。

<pH測定>
基本的には24時間モニタリングします。食道のpHを調べることで、酸の逆流がどの程度おきているのかを調べます。



◇ 日常生活での注意点

胃食道逆流症の原因には日常生活に関わることも多く、日常生活の改善がとても重要です。

腹圧を上げる行為を避けましょう。
前かがみの姿勢・お腹をベルトやガードルなどで締めつける・重い荷物を持つ・排便時の力みなど。
食後すぐに横にならないようにしましょう。食後1〜2時間は横にならないようにしましょう。食後は、胃内容物の量が多く酸性度も高いため、逆流が起きやすくなります。

肥満防止に努めましょう。
肥満は腹圧上昇の原因になります。


就寝時に枕や座布団などで上半身を高くして就寝するようにしましょう。胃酸の逆流を防ぐことができます。また、横向きに寝る場合は、右側を下にして寝るのが効果的です。

食べ過ぎ・早食いをしないようにしましょう。特に、夕食は食べ過ぎに注意をしましょう。腹八分目が原則です!!

食べ過ぎに注意する食品。脂肪の多い食品・香辛料・酸味の強い食品・嗜好品(アルコール・コーヒー・チョコレートなど)を食べ過ぎない。タバコも控えましょう。これらの食品は、症状を悪化させる可能性があります。もちろん、絶対とってはダメという意味ではありません。



◇ 胃食道逆流症の治療

症状の軽減には、日常生活での注意を守ることがまず第一ですが、必要に応じて、予防や治療のために薬も使用されます。

【胃酸分泌抑制剤(いさんぶんぴつよくせいざい)
胃酸の分泌を抑えて、食道へ逆流する胃酸の量を少なくします。
PPI(プロトンポンプ阻害剤):1日を通して安定した胃酸分泌抑制作用があり、作用は強力です。
<薬品名>オメプラゾン・オメプラゾール・タケプロン・パリエットなど
H2ブロッカー
<薬品名>アシノン・ガスター・ザンタック・タガメット・プロテカジンなど


【制酸剤(せいさんざい)】
胃酸を中和します。ただし、いったん中和しても胃酸は次々に分泌されるため、持続性はありません。
<薬品名>マーロックスなど

制酸作用は、制酸剤 < H2ブロッカー < PPI の順に強くなります。

【粘膜保護剤(ねんまくほござい)】
食道粘膜の傷口を覆って胃酸から守ります。
<薬品名>アルロイドG・アルサルミン・セルベックス・プロマックなど

【消化管運動改善剤(しょうかかんうんどうかいぜんざい)】
食道や胃の蠕動(ぜんどう)運動を回復させ、逆流した胃液を胃へ戻す機能を高めます。
<薬品名>ガスモチン・ガナトン・セレキノンなど

薬物療法で症状が改善しない場合や、症状が改善しても食道炎が持続する場合には手術を行うこともあります。



◇ 乳児の胃食道逆流症

新生児の嘔吐は、生理的反応としてよく見られますが、出生後数ヶ月たっているにも関わらず、頻繁に嘔吐を起こすような場合は、胃食道逆流症の疑いがあります。胃酸の逆流により、食道炎や気管支炎になって喘息のようなひどい咳をすることもあります。またひどい場合には、脱水症状や栄養障害もおこすこともあります。
 乳児は、おとなに比べ逆流を防ぐしくみが未発達であるため、より逆流をしやすいのです。普通は1歳までに自然に治ることが多いようです。症状が軽い場合は、1回に与えるミルクの量を少なくしたり、ミルクを飲ませた後しばらくは体を立てた状態にして、逆流を防ぎます。症状がひどい場合には、脱水症状を防ぐために、水分やブドウ糖・ミネラルなどの補給や点滴をしたり、制酸剤・消化管運動改善剤・鎮吐剤などを用いることもあります。また、原因によっては手術をする場合もあります。
上記に述べたミルクの飲ませ方や、飲ませた後の姿勢などを守っているにも関わらず、嘔吐の回数が多い場合には、早めに小児外科を受診するようにしましょう。


まとめ


胃食道逆流症について、お分かりいただけたでしょうか?
 胃食道逆流症は、近年増加している疾患でありながら、症状が繰り返しあっても市販の胃腸薬ですませ、受診していない方が多いのが現状のようです。
 食後の1〜2時間に胸やけがひどくなる・横になると胸やけがするなどの症状がある方は、胃食道逆流症の可能性もありますので、受診をすることをお勧めします。
また、すでに胃食道逆流症と診断され薬物治療を始めている方も、併せて日常生活での注意を守り、少しでも症状が軽減できるようにしましょう。


アルバ薬局  新長田店
管理薬剤師  鵜鷹 奈美


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