アルバ会社説明会



第64号 パーキンソン病について

2007/02/26

目次:

※ご覧になる項目を上の目次よりお選び下さい。


“パーキンソン病について”

今回の処方せん豆知識は、日本全体で10数万人(推定)の患者数がいるといわれ、高齢化にともない増加傾向にあるパーキンソン病についてお話しします。



◇ パーキンソン病とは

私たちの脳は、考える・からだ全体をコントロールするなど、からだの司令塔の役割をしています。これらの司令は、脳の中で作られる神経伝達物質によって行われています。
パーキンソン病は、神経伝達物質の一つである「ドーパミン」が不足することによって起こります。ドーパミンは、主に運動に関与していますので、不足するとからだの動きが悪くなります。つまり、パーキンソン病とは、ドーパミンが不足することによって、からだがスムーズに動けなくなる病気です。
日本での患者数は、人口10万人につき80〜100人位で、65歳以上では人口10万人につき200人といわれており、決して珍しい病気ではありません。
発病する年代は50〜60歳代が多いのですが、20〜80歳代近くまで幅広い年代で発症します。40歳以下で発症した場合は、若年性パーキンソン病として区別されています。また、男女の差はなく、通常は遺伝する病気でもありませんが、若年発症の方は一部家族性に起きます。


◇ パーキンソン病が起こる原因

「ドーパミン」は、中脳にある黒質とよばれる部分にある神経細胞で作られていますが、パーキンソン病の患者さんは黒質の神経細胞が減少しているため、ドーパミンが十分に分泌されません。しかし、黒質の神経細胞が減少する原因はハッキリ解っていません。
加齢要因・環境要因・遺伝的要因(家族性のみ)などが関与している可能性があるといわれています。
脳内のドーパミンの量は、20歳頃に最大となり、加齢とともに減少していきます。
20歳の頃のドーパミンの量を100%とすると、通常では100歳位で20%まで減少することになります。しかし、パーキンソン病の患者さんではドーパミンの減少する速度が通常よりも速く50〜60歳代で20%くらいまで減少し発症にいたります。



◇ パーキンソン病の症状

パーキンソン病では、主に次のような運動障害が起こります。








手足のふるえ
(振戦・しんせん)
安静にしている時に自然に起こるのが特徴で、ふるえに注意したり、動作をしたりすると止まります。必ず片方の手足から始まって反対側に広がります。
筋肉のこわばり
(筋固縮・きんこしゅく)
筋肉がこわばって硬くなるため、関節がうまく動かせなくなり、動作がぎこちなくなります。主治医などが腕を屈伸した時にカクンカクンという筋肉の抵抗を感じることが特徴で、歯車が噛み合って回転する時の感じに似ている事から、歯車現象と呼ばれています。
動きが鈍い
(動作緩慢・無動)

・何かやろうとしても動き出すまでに時間がかかり、動作全体も遅くなります。
・表情が乏しくなり、まばたきが少なくなります。
・歩行開始時、始めの一歩が踏み出せない(すくみ足)。
姿勢を保つことの障害
(姿勢保持障害・姿勢反射障害)
バランスを崩したときに反射的に姿勢を立て直すことが出来ず、転びやすくなります。また、歩行が前かがみで歩幅か狭くなったり、歩き出すと急に止まれなかったりします。
その他の症状 ・ 便秘
・ 立ちくらみ
・ トイレが近くなる
・ 気分が憂鬱になる
・ 病気が進行すると、無関心・注意力の低下などがあらわれる


◇ パーキンソン症候群

脳梗塞に既往のある方や、ある種の薬物(うつ病の薬・高血圧の薬・胃潰瘍の薬など)、中毒(一酸化炭素中毒・マンガン中毒など)などでも、パーキンソン病と同じ様な症状を示す事があります。これらは原因も治療法も異なるため、パーキンソン病と区別して「パーキンソン症候群」と呼んでいます。


◇ パーキンソン病の進行と重症度

パーキンソン病の重症度は、一般に「ヤールの重症度分類」によって判断されます。
また、厚労省の特定疾患対策の治療対象疾患として認定されるのは、ヤールの重症度分類3度、生活機能障害度2度以上です。

ヤール重症度分類 生活機能障害度
1度 一側障害でからだの片側だけの振戦・固縮を示す。軽症 1度 日常生活、通院にはほとんど介助を要さない。
2度 両側性の障害で、姿勢の変化がかなり明確となり、振戦・固縮・寡動〜無動ともに両側にあるため日常生活がやや不便。
3度 明らかな歩行障害がみられ、方向変換の不安定など体のバランス障害がある。日常生活動作障害もかなり進み、突然現象(小走りとなり、転んでしまう)もはっきりとみられる。
2度 日常生活、運動に介助を要する。
4度 起立や歩行など日常生活動作の低下が著しく、労働能力は失われる。
5度 完全な廃失状態で、介助による車椅子移動、または寝たきりとなる。 3度 日常生活に全面的な介助を要し、歩行・起立不能。



◇ パーキンソン病の治療

治療には薬物療法と手術療法がありますが、基本は薬物療法です。適切な治療を行えば症状の改善がみられたり、進行を食い止める事ができます。治療の目的の一つは、生活の質を低下させない事です。この項では薬物療法のみについて解説します。

〔薬物療法〕

L−ドーパ
パーキンソン病ではドーパミンが不足しているわけですから、ドーパミン自体を服薬すれば良いのではないかと思われるかもしれませんが、ドーパミンはそのまま服用しても脳に入っていきません。そこで、脳に入ってからドーパミンに変わるL−ドーパを使います。この系統の薬剤は抗パーキンソン病薬の中では最も効果の強いお薬で、即効性もあります。
 しかし、長期間のんでいると効果が弱くなったり、症状がうまく調節できなくなるという欠点があります。これらの問題を回避するために、薬の飲み方を調節したり、他の薬剤を併用したりします。
 <薬品例> マドパー・イーシードパール・メネシットなど

ドーパミン受容体刺激薬(ドーパミンアゴニスト)
ドーパミン受容体に直接作用しドーパミンの働きを補います。L−ドーパと比べると効果では劣りますが、作用時間が長いのが特徴です。L−ドーパとの併用により日内変動の改善効果も期待できます。
 <薬品例> カバサール・ペルマックス・パロデールなど

MAO−B阻害薬
MAOはドーパミンを分解する酵素で、この酵素の働きを抑えることにより、ドーパミン量の減少を抑えます。L−ドーパと併用することによりドーパミンの量を維持することが出来ます。
 <薬品例> エフピー

ドーパミン放出促進薬
抗ウイルス剤として開発されたもので、作用機序はよく解っていませんが、脳のドーパミンを作っている場所から、ドーパミンが放出するのを助けます。
 <薬品例> シンメトレル
抗コリン薬
パーキンソン病で相対的に活動が高まっているアセチルコリンを使う神経細胞を抑えるために使用します。特に、振戦(ふるえ)に効果があります。
 <薬品例> アーテン・アキネトンなど

ドロキシドパ
病状が進んだ段階で減少するノルアドレナリンを補充します。すくみ足・姿勢反射障害に有効です。
 
<薬品例> ドプス



◇ パーキンソン病の症状に対する対策

歩行障害 腕を大きくふって歩きましょう。
歩くことに意識を集中しましょう。
小刻みな早足になりそうになったら一旦立ち止まり、姿勢を立て直しましょう。
姿勢障害 壁に背中をつけて真っ直ぐ立ち上がりましょう。
すくみ足 足踏みしながら歩きはじめましょう。
外出時は杖を持ち、杖の先をまたぐつもりで歩きましょう。
頭の中で調子やリズムをとるとよいでしょう。
言語障害 話したい事に意識を集中して、ゆっくりと話しましょう。
深呼吸をして落ち着いて話しましょう。
声を出して本を読むなど練習も大切です。



◇ 日常の注意点

〔食事について〕

パーキンソン病の薬は水に溶けにくく、酸性にすると吸収されやすくなりますので、酢の物や柑橘類のジュースなどで酸を補うようにしましょう。また、ビタミンCをとるとよいとの報告もあります。

一回の食事に時間がかかり充分な食事量が取れない場合には、回数を増やすなどの工夫をしましょう。

便秘になりやすいので水分を十分とり、食物繊維をたっぷり摂りまましょう。

治療中、タンパク質を少なくする食事が必要になる場合もありますので、主治医とよく相談しましょう。

〔日常生活について〕


日常的な運動をする事は大切なので、疲れない程度に適度な運動を心がけましょう。

散歩を日課に取り入れましょう。

仕事や趣味など、できるだけこれまでのライフスタイルを継続しましょう。

廊下や風呂場に手すりをつけるなど、倒れない工夫も大事です。

〔精神面について〕


ストレスは症状を悪化させます。ストレスをためず、前向きな気持ちを保ちましょう。

うつ状態になることがあります。意欲の低下・やる気のない時は、主治医に相談しましょう。



まとめ

パーキンソン病は、約千人に一人の割合でかかる病気ですが、高年齢化に伴い今後はもっと増えることが予想されています。治療法に関しても、年々進歩がみられています。
パーキンソン病をよく理解し、自分の症状をよく知って適度な運動やリハビリなどで症状をコントロールしましょう。
きちんと薬を服用することにより、症状が軽減され、字を書いたり、箸で食事したりということがスムーズに出来るようになり、生活の質を低下させずにすむことが可能です。また、日常の具体的な様子を医師に伝えることは、症状にあわせた薬の内容・服用時間・回数などを決めるのに重要な情報となります。家族や職場の人・友人の方々の理解も大切です。20年から30年と長い時期をお薬で症状をコントロールする方もいますので、何でも話せる主治医を持つことも大切です。


アルバ薬局  御幣島店
薬剤師  松永 圭介


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