通常、わたしたちの体に備わっている免疫系は、細菌などの外敵から身を守るために働いています。しかし、歯周病の原因となる細菌が歯肉に対して刺激を与え続けると、免疫系が過剰に反応します。つまり、歯周組織にいるマクロファージやリンパ球などの免疫細胞が、酵素やサイトカインといったタンパク質を多量に産生するからです。これらのタンパク質は、歯肉に蓄積して炎症を悪化させるだけでなく、血液中に入っていろいろな全身疾患に悪影響を及ぼすといわれています。

最近の研究では、炎症性サイトカインは血液の中を通って全身に回ることから、糖尿病・早産・低体重児出産・心臓病などが歯周病に関連する疾患とされています。また、肺炎・気管支炎・骨粗しょう症などにも関連すると考えられるようになりました。
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| ●糖尿病 |
糖尿病になると、脂肪細胞が炎症性サイトカインを産生します。この炎症性サイトカインによってインスリンの作用が弱まり、血糖値が高くなります。つまり、炎症は糖尿病を悪化させる因子のひとつになります。
一方で、歯周病になると、歯肉で炎症性サイトカインが産生されます。この炎症性サイトカインが、口の中の毛細血管から血液中に入ると、インスリンの作用がますます弱まり、糖尿病を悪化させる原因になります。
またこれまで、糖尿病の方は身体全体の免疫力が低下するため、歯周病にかかりやすいといわれていました。最近では、糖尿病の方の身体の中で増える「糖化タンパク質」が、免疫細胞を刺激することによって、多くの炎症性サイトカインが産生されることがわかってきました。このサイトカインが歯周病の炎症を悪化させるともいわれています。このことから、歯周病は腎症(腎機能障害)・網膜症(視力低下)・神経症・大血管障害・小血管障害に次いで、第6番目の慢性合併症といわれるようになりました。
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| ●早産 |
血液中における炎症性サイトカインの濃度上昇は、出産の合図とみなされるといわれています。前述したように、歯周病になると炎症性サイトカインが過剰に産生され、血液中のサイトカイン濃度が上昇します。この上昇は、身体の中で出産の合図と勘違いされるため、歯周病は早産の原因になると考えられています。
また、炎症性サイトカインが過剰に産生されると、歯周病が起こっている歯肉は慢性的な炎症状態になり、プロスタグランジンという物質が作られます。プロスタグランジンが血液の中を通って子宮に到達すると、子宮収縮と子宮頚部の拡張を引き起こすといわれており、これも早産の原因と考えられています。
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| ●低体重児出産 |
母親が歯周病にかかっていると、その病原菌が血液中に入り、胎盤を通して胎児に移ることがあります。これが原因で胎児の成長が阻害され、小さな赤ちゃんが生まれることがあります。
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| ●心臓病 |
歯周病と関連のある心疾患として、心内膜炎(しんないまくえん)と虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)があげられています。
<心内膜炎>
心臓の内側は薄い膜で覆われいますが、細菌などが原因でこの膜が炎症を起こすことを心内膜炎といいます。生まれつき心臓の弁膜や内膜壁に障害をもつ方や、人工弁を移植した方が歯周病になると、歯周病菌が血液を通って障害のある部分に到達することがあり、心内膜炎を引き起こす場合があります。
<虚血性心疾患>
虚血性心疾患とは、心臓に酸素と栄養を供給している冠状動脈(かんじょうどうみゃく)という血管が狭くなることで起こる心臓病です。血行が悪くなる狭心症(きょうしんしょう)と、心筋の一部が死んでしまう心筋梗塞(しんきんこうそく)があります。
歯周病が関わる虚血性心疾患については、次の2つの原因が考えられています。
| 1. |
歯周病菌が死んだときに出す毒素に対抗して免疫系が働くと、炎症性サイトカインが産生されます。これが血液を通って、心臓の血管壁に作用すると、酸化ストレスが増加して血管が障害を受けます。
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| 2. |
歯周病菌の中には、血小板が固まるように作用する物質(血小板凝固因子:けっしょうばんぎょうこいんし)を持つものがあります。この物質が、直接心臓の冠状動脈に血栓を作るように働いて、血管を狭くします。
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このような酸化ストレスや血小板凝固因子などの作用は、心臓の血管壁のコレステロールの沈着や血栓形成などを引き起こします。その結果、虚血性心疾患が発症する危険性を高めると考えられます。
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| ●肺炎・気管支炎 |
高齢者や脳卒中の既往のある方は、嚥下反射*1(えんげはんしゃ)と咳嗽反射*2(がいそうはんしゃ)が弱くなり、唾液や食べ物が誤って肺や気道に入ってしまいやすくなります。また、免疫系が低下している高齢者などは、歯周病にかかると歯周病菌が唾液により多く含まれるようになります。この唾液が肺や気道に誤って入ると、肺炎や気管支炎にかかる確率が高くなります。
| *1 |
嚥下反射… |
食べ物が咽頭から食道に送られる生理的反射のことを言います。
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| *2 |
咳嗽反射… |
通常、気道の異物や分泌物は、線毛運動(せんもううんどう)によって除去されます。それでも除去できない異物は生体防御反応として咳をすることによって除去されます。この生理的反射のことを言います。
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| ●骨粗しょう症 |
骨粗しょう症は、骨の密度が減ってスカスカになってしまう病気です。歯を支えている歯槽骨も骨ですから、歯槽骨がもろくなっている可能性があります。この状態で歯周病になると、容易に骨が溶けてしまうので、骨粗しょう症の人は歯周病になりやすく、重症化する可能性が高くなります。
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歯周病は、初期段階では自覚症状がほとんどないため、誰もが放っておいてしまいがちです。しかし歯周病が自然に治ることはないので、気づいたときにはかなり悪化していてもおかしくありません。したがって、ひどくなる前に歯周病を予防することがなによりも大切です。
歯周病は、セルフケアを行うことである程度予防できる病気です。また、歯周病になってしまった場合でも、その進行をとめるには効果的です。以下にあげる項目を中心に毎日の生活を見直してみてください。
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| (1)1日1回はていねいに歯を磨く |
歯周病予防において一番大切なのは、しっかりと行き届いた歯磨きです。歯垢は日々蓄積していくので、歯磨きも毎日行う必要があります。
食事の後は、口内細菌の活動が活発になるので、食事をするたびすぐに歯磨きをするのが理想的です。また、寝ている間は唾液の分泌が減るため、唾液による殺菌作用や自浄作用(じじょうさよう)が低下して細菌が増殖しやすくなります。特に夕食後の歯磨きを、ていねいに10分以上行うようにしてください。うがいだけではねばねばした歯垢を取り除くことはできません。歯間ブラシやデンタルフロスなどの補助器具を使うとより効果的です。

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| (2)喫煙を控える |
喫煙をする人は、喫煙しない人よりも2〜8倍歯周病にかかりやすいといわれており、重度の歯周病にかかった人の9割が喫煙をしていたという報告があります。喫煙をすると、ニコチンやタールなどによって血管が収縮し、歯肉の血流が悪くなって炎症が悪化します。また、免疫機能が低下して、細菌が増殖しやすくなります。さらに、タバコに含まれる化学物質が、歯周病の症状である歯肉からの出血を抑えたり、歯肉を硬くしたりしてしまうため、歯周病に気づくのが遅くなることもわかっています。
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| (3)アルコールを控える |
アルコールが直接歯周病の原因となるわけではありませんが、お酒をよく飲む人の歯周病は進行が早いという報告があります。その理由のひとつとして、お酒をのんだあとは歯磨きがおろそかになることがあげられています。
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| (4)ストレスをためない・睡眠をとる |
ストレスをためこむと、免疫機能が弱まることが分かっています。免疫力の低下はすなわち歯周病菌の増殖につながり、歯周病を進行させる原因となります。ストレスをためないように心がけましょう。
また、睡眠不足や過労も免疫力を低下させる原因となります。つまり、全身の休養も歯周病の予防につながるのです。
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| (5)定期的に歯科医の検診を受ける |
毎日ていねいに歯磨きをすることで、ある程度の歯垢は落とせますが、石のように硬くなって歯にこびりついた歯石はなかなか落とすことができません。また、「歯周ポケット」が深くなってしまうと歯ブラシでは届きにくいため、「歯周ポケット」内の歯垢や歯石を取り除くには歯科の専門的なケアが必要になります。したがって、歯周病にかかっているかどうかのチェックも含めて、少なくとも半年に1回は歯科を受診するようにしましょう。
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| (6)噛みごたえのあるものをバランスよく食べる |
食べ物をよく噛むことで、殺菌作用のある唾液が十分に分泌され、歯周病菌の繁殖を抑えることができます。また、固いものや繊維質の多いものを食べると、その刺激で局所の抵抗力が高まるだけでなく、歯についた食べ物や歯垢などがとれやすいという効果があります。
また、歯肉はコラーゲンで構成されており、ビタミンCには壊れたコラーゲンの合成を促進させる効果があるといわれています。ビタミンCや繊維質の多い野菜などをとるとよいでしょう。一方で、糖分は歯垢の原因になりやすいことも分かっています。できるだけ糖分はひかえてください。また、食べ物に気をつかうだけでなく、間食を控える・だらだらと飲食しないといった食生活も見直すと、歯垢がたまりにくくなって効果的です。
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