アルバ会社説明会





第68号 痔について

2007/07/18

目次:

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痔について

今回の処方せん豆知識は、痔についてお話します。

痔は、日本において虫歯の次に多い病気で、3人に1人は痔に悩んでいるといわれています。わたしたちにとって痔は身近な病気のひとつであるといえます。
しかし、恥ずかしいこともあって、なかなか人に相談できずに長く痔を患っている人が多く、そのまま放置して悪化させる場合もあります。肛門からの出血の多くは痔によるものですが、痔による出血だと思い込み、悪化してからいざ診察を受けてみたら、実は直腸・大腸ガンや潰瘍性大腸炎などによることもありますので自己判断は厳禁です。大変多い病気であるにもかかわらず、肛門のしくみや痔という病気、その原因、治療法などについてはあまり知られていません。今回の処方せん豆知識では、まずは簡単に肛門のしくみをお話してから、代表的な痔疾患の説明とその治療法、普段の生活を見直すことでできる予防法について紹介します。



肛門のしくみ

肛門は、消化機能の最後にあたり、便やガスの排出を調節する器官です。正しくは肛門管(こうもんかん)と呼び3cmほどの長さがあります。
肛門管の端から1.5cmのところに歯状線(しじょうせん)と呼ばれるぎざぎざした部分があります。これは、まだ母親のおなかにいる胎児の時期に、原始直腸(直腸になる予定の部分)と原始肛門(肛門になる予定の部分)がくっついたものです。この歯状線より上と下とでは性質がまったく異なります。



歯状線より下は、肛門周囲の皮膚の延長である肛門上皮(こうもんじょうひ)に覆われています。体の表面の皮膚と同じように体性感覚神経(たいせいかんかくしんけい)に支配されているので、痛みの刺激に対して非常に敏感です。一方、歯状線より上は直腸にあたります。赤くきらきら輝く腺性粘膜(せんせいねんまく)に覆われ、大腸などと同じく自律神経に支配されており、痛みなどの自覚はほとんどありません。
また、肛門管は輪状の筋肉に囲まれており、内側の筋肉を内肛門括約筋(ないこうもんかつやくきん)、外側を外肛門括約筋(がいこうもんかつやくきん)と呼びます。排便のときに自由に締めたり緩めたりできる筋肉が外肛門括約筋です。内肛門括約筋は自分の意思では調節できない筋肉で、普段は収縮していることで肛門が閉じています。しかし、実は肛門はこの筋肉だけではしっかり閉じていることはできず、1mmほどのすき間があいてしまいます。そのすき間を塞ぐために、直腸下部から肛門にかけては、動脈・静脈や線維などがあつまったクッションのような構造になっています。


排便のしくみ

消化器官は大腸からS状結腸、直腸、肛門へと続きます。
普段、直腸は空の状態で便は入っていません。結腸が便でいっぱいになると蠕動運動(ぜんどううんどう)が誘発され、便やガスが直腸に移動することで便意が起こります。すると、反射的に内肛門括約筋が弛緩しますが、同時に外肛門括約筋は収縮するので、便やガスが漏れることなく便意を我慢することができます。排便のときは、いきむことで腹圧がかかり、直腸が収縮して直腸の内圧が高まると、反射的に外肛門括約筋が弛緩します。そして便やガスが排泄され終わると、内肛門括約筋が収縮して再びもとの閉じた状態に戻ります。


痔の種類

痔は肛門のさまざまな病気の総称で、その病気が発生する場所によって、名称・症状が異なります。



■ 痔核(じかく)


肛門をしっかり閉じておくためのクッションの部分には、細かい動脈や静脈が網目のように集まっています。この血管1本1本がふくらんでこぶ状になったものや、クッションを支えている組織が弱まったり断裂したりして垂れ下がったものを痔核といいます。形がいぼに似ていることからいぼ痔(いぼじ)とも呼ばれます。
痔核の主な原因は、肛門部への負担による血行障害と炎症です。便秘や下痢による排便の異常・排便時のいきみの繰り返し・長時間の同一姿勢によるうっ血・連続する力仕事・出産・過度のアルコールや香辛料の摂取などがあげられます。
痔核はできる場所によって、内痔核(ないじかく)と外痔核(がいじかく)に分類されます。

内痔核(ないじかく)

歯状線より上の直腸部分にできる痔核を内痔核といい、痔核の8割を占めます。多くの場合、排便時に真っ赤できれいな血が出ることで気づきます。便に血が混じっていたり、トイレットペーパーに血がついたりする程度から、ぽたぽたと出たりほとばしり出たり大量に出血することもあります。
内痔核は進行状態により4つに分類されます。

1) 第1度
痔核が肛門の中でふくらんでいる程度で、排便しても脱出(脱肛:だっこう)することはありません。排便時に出血がみられますが、痛みはありません。
2) 第2度
  痔核が排便時に肛門の外に出てくるようになりますが、排便後は自然に戻る状態です。出血とともに痛みも生じてきます。
3) 第3度

排便時に脱出した痔核が、自然には戻らず指で押しこむと戻る状態です。ひどくなると、立ち上がったり咳をしたりしておなかに力が入ったとき脱肛することもあります。出血と痛みがあります。

4) 第4度
痔核が脱出したままで、指で押し込んでも肛門内に戻らなくなった状態です。痔核は固くなり、出血も痛みもなくなります。
外痔核(がいじかく)

外痔核は、歯状線より下の部分にできるものをさします。慢性の炎症で徐々に大きくなったものは、突起するだけで痛みや出血はありません。しかし、突然血栓をともなって生じたものは強く痛み、ときに皮膚が破れて出血することがあります。これは血栓性外痔核(けっせんせいがいじかく)とよばれるものです。


■ 裂肛(れっこう)


歯状線より下の肛門上皮(こうもんじょうひ)が切れた状態で、切れ痔(きれじ)、裂け痔(さけじ)とも呼ばれます。激しい痛みや軽い出血をともないます。痛みを感じると、反射的に内肛門括約筋がけいれんを起こし、切れた部分に刺激を与えるため、排便のあともしばらくじーんとした痛みが続きます。
裂肛の多くは、便秘などでかたくなった便を無理に出そうとすることが原因となります。また、痛みのために排便を我慢するようになると、腸にとどまった便から水分が吸収されて、便はますますかたくなってしまいます。さらに、一度切れた部分をかたい便が何度も傷つけると、切れた部分はどんどん深くなって慢性化します。最終的に肛門狭窄(こうもんきょうさく)となると、便が細くなったり出にくくなったりします。

■ 痔瘻(じろう)


歯状線の周囲には、8〜12個の肛門陰窩(こうもんいんか)という小さなくぼみがあります。そのくぼみから大腸菌などが逆流して入り込み、肛門陰窩につながる肛門腺(こうもんせん)などが感染を起こすことで化膿し、肛門の周囲に膿がたまった状態を肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)といいます。膿がたまっているので腫れるほか、排便に関係なくズキズキと強く痛み、38〜39度の発熱をともなうこともあります。


その膿が皮膚を破って出ることで炎症がおさまると、後に瘻管(ろうかん)と呼ばれる管が残ります。これが痔瘻です。
肛門周囲膿瘍が悪化して痔瘻に進行することが多いといわれています。肛門の内と外がトンネルでつながった状態になるので、いつでも繰り返し瘻管から膿が出たり、膿が中にたまって痛んだりします。
原発巣がある限り、痔瘻は放置しておいても自然に治ることはなく、瘻管は枝分かれして複雑化していきます。また、痔瘻を長い間治療せずに放っておくと肛門ガンにつながることもあるため、痔瘻の治療には手術を行います。


痔になる原因 〜便秘は大敵〜

わたしたち人間は立って生活するため、上半身の体重が骨盤周辺に集中します。骨盤周辺に負担がかかると肛門の血行が悪くなるので、どうしてもうっ血しやすく痔になりやすいといえます。
しかし、なんといっても一番の原因は便秘です。便秘になると、便が腸内にたまることで肛門部が圧迫されてうっ血しやすくなります。また、便がかたく太くなるので、排便のときに肛門の粘膜や皮膚を傷つけてしまい、その部分から菌が入って炎症を起こしやすくなります。また、かたくなった便を出すために必要以上にいきんでしまうので、肛門周辺の血管に負担がかかりうっ血を引き起こします。一方、勢いのある下痢は肛門陰窩に入りやすく、便の中の菌が肛門腺に入り込むと、化膿して痔瘻の原因となります。
さらに、過労は局所の免疫力を低下させるため、菌に感染しやすくなります。また、精神的な不安やストレスによって、胃腸の働きをコントロールしている自律神経と腸管神経系の働きが乱れると、便秘や下痢を起こしやすくなります。お酒の飲みすぎも肛門のうっ血を起こすのでよくありません。

女性は男性よりも痔になりやすいといわれています。例えば、ダイエットで食事の量を減らしたり、食物繊維や水分の少ない食事を続けたりしていると、便秘になりやすくなります。また、月経前は、女性ホルモンの影響で腸の蠕動運動が弱まるため、どうしても便秘になりやすくなります。
妊娠と出産も痔と大きく関わっています。まず、妊娠中は、大きく重くなった子宮が直腸や肛門を圧迫するため、肛門や直腸周辺に集中している細い静脈がうっ血して痔核ができやすくなります。もともと痔を患っていた女性は、妊娠中に痔が悪化しやすいといわれています。また、肛門も圧迫されるので便秘になりやすくなります。分娩のときには、強くいきむので腹圧が高まり、肛門が脱出することもあります。出産後には逆に腹筋がゆるむので腸が弛緩し、便秘を引き起こしやすくなります。さらに、母乳を与えることで体内の水分が不足して便がかたくなり、便秘をしやすくなります。


毎日の予防から

痔は誰もがかかりやすい病気です。しかし、毎日の生活習慣を見直すことで、痔の改善と予防につなげていくことができます。

便秘・下痢にならないように

痔の一番の原因は便秘です。便秘にならないようにしましょう。便秘症の場合、下剤を連用するのは好ましいことではありません。食事内容を改善し、規則的な排便の習慣をつけることで気長になおしていくことを心がけてください。
また、下痢は直腸や肛門を刺激し、細菌感染の原因にもなるので注意しましょう。

排便は我慢せず、短時間で

特に女性は、便意がおこっても排便を我慢しがちで、便秘になりやすくなります。また、我慢する習慣が続くと、腸の運動が鈍くなり便秘が悪化してしまいます。規則的な排便習慣を身につけることが大切です。
排便のときに強く長時間いきむと、肛門に負担をかけることになります。おしりにとって理想的な排便は、1日1回、軽くいきんで短時間で済ませることです。

肛門の血流改善のために

毎日お風呂につかるとよいでしょう。肛門周辺が温まって血液循環がよくなります。また、清潔になるので細菌の繁殖が抑えられます。患部はいつも清潔にしておきましょう。排便後は毎回水またはお湯で洗うと効果的ですが、洗いすぎは逆にただれの原因にもなるので注意してください。また、化膿している場合の入浴は、症状を悪化させるので避けてください。
逆に、腰や肛門を冷やすと、肛門の血流が悪くなり痔になりやすくなります。特に今の時期はクーラーで足元から冷えますので注意が必要です。
長時間座りっぱなし、または立ちっぱなしもよくありません。肛門のうっ血を起こしやすくなりますので、時々適度な運動を取り入れ、血流をよくするよう心がけましょう。

便秘にならない食生活を

バランスの良い食生活で腸の調子を整えると便秘が改善されます。また、肛門周りの血液の流れもよくなるため、痔の予防・改善につながります。

1.

食物繊維は便秘を改善するだけでなく、腸の動きをよくします。食物繊維を多く含む野菜・果物・玄米・海草を多く取るようにしましょう。

2. マグネシウムは腸内の水分量を増やし、便の量を増やすことで便秘を改善します。海草・玄米・ごまなどマグネシウムを多く含む食材をとるようにしましょう。

3.

水分を十分に取りましょう。わたしたちが1日に必要とする水分量は1.5〜2Lといわれています。体の排泄物を排出し、便秘を防ぐことにもつながるので意識して取るようにしましょう。

4.

発酵食品は腸を元気にします。納豆・ヨーグルトなどの発酵食品を日常的にとると効果的です。

5.

唐辛子・生姜・カラシ・胡椒・ワサビなどの香辛料は、多量にとることで肛門部の血管を刺激し、うっ血を起こしやすくなります。適量を心がけてください。

6.

お酒の飲みすぎタバコの吸い過ぎも肛門の血流を悪くし、痔を悪化させる原因となります。



痔の治療

痔の治療は、生活指導や薬を使って治療する保存療法と、手術などの外科的治療に分けられます。

《保存療法》

保存療法は、肛門を清潔にしたり、便秘・下痢を解消するために食生活を改善したりなど、痔を悪化させないようにしながら薬で治療を行う方法です。薬には坐薬や軟膏といった肛門部に使用する外用薬と内服薬があります。
外用薬は、痛み・出血などを緩和する作用だけでなく、肛門部で溶け、便の表面に付着することでスムーズに排便できるようにする潤滑油としての作用もあります。
内服薬には、痔を小さくするもの、血流をよくするもの、炎症を抑えるものなどがあります。

炎症を抑える・痛みを抑える・出血を止める
外用薬: ボラギノールN・プロクトセディル・ネリプロクトなどの坐剤・軟膏
内服薬: サーカネッテン・ヘモナーゼ・ヘモリンガルなど

血液の流れをよくしてうっ血を改善する
外用薬: ボラザG坐剤・軟膏など
内服薬: ヘモクロン・タカベンス・エスベリベンなど

患部の血管を収縮させてうっ血を改善する
外用薬: ヘルミチンS坐剤

局所の感染を防いで患部の治りを速める
外用薬: ポステリザン・強力ポステリザンなどの軟膏

漢方療法

[痔全般]

乙字湯(おつじとう)・大柴胡湯(だいさいことう)・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)・大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)・当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)
※症状や体質によって使い分けします。また、2種類のお薬を組み合わせて使ったり、緩下剤を加える場合もあります。


[痔による出血]

キュウ帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)・三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)


[炎症を抑える・痛みを和らげる]

外用薬:

紫雲膏(しうんこう)


便秘を改善して排便時の力みを軽減させる

便軟化剤
便膨張性薬剤(オオバコの種など)


《外科的治療》


外科的治療には、痔の種類や症状の進行度合いによって次のような治療が行われます。

■ 痔核 ■

[注射療法]

出血する内痔核に有効な治療です。痔を固める硬化剤を注射して出血を抑えます。内痔核に注射するため痛みはなく、麻酔なしで治療できます。止血効果は1〜2年です。

[輪ゴム結紮療法(わごむけっさつりょうほう)]

脱出する内痔核に有効な治療です。小さな輪ゴムを痔核の根元にはめ込み、時間をかけてゆっくりと締め付けていきます。出血することもなく、約1週間で痔核を除去できます。痛みを伴う外痔核や、小さすぎるあるいは大きすぎる痔核には向きません。

[痔核切除手術]

痔核が外に出てきて生活に支障が生じる場合や、出血がほかの方法で治療できない場合に行います。痔核に注ぐ動脈を根元で縛って、痔核を切除する方法です。


■ 裂肛 ■

裂肛が慢性化し、裂肛の部分が潰瘍のようになり、その周囲で肛門ポリープなどができた場合には手術を行います。手術は、肛門狭窄の原因となっている内肛門括約筋を切開して肛門を広げます。その後で、裂肛周囲の肛門ポリープなどを切除します。

■ 痔瘻 ■

[肛門周囲腫瘍の切開術]

感染症で肛門の周囲に膿が溜まった場合に、皮膚を切開して膿を出す治療です。

その他の手術
痔瘻の治療には、痔瘻を切除するしか方法がありません。しかし、痔瘻を切除するとき、肛門の締りに関係する内・外肛門括約筋を傷つけてしまうと、排便のコントロールができなくなってしまいます。そのため、瘻管のすべてを処置するのではなく、膿の入り口(原発口)と膿のたまっているもとの部分(原発巣)を選んで切除する括約筋温存手術(かつやくきんおんぞんしゅじゅつ)という方法を行います。


まとめ

痔は、年齢・性別を問わず、誰でもかかる可能性のある病気です。まずは日々の生活習慣を見直して便秘にならないように注意し、痔を未然に防ぐように心がけていきましょう。
また、近年は食生活が欧米化したことで高タンパク・高脂肪・低食物繊維の食事に偏り、大腸ガンが急激に増えています。痔による出血と勘違いしているうちにガンが進行し、発見が遅れる例も少なくありません。症状が似ていても痔ではない病気は他にもたくさんあります。肛門に少しでも異常を感じている人は、決して我慢したり自己判断したりせずに、専門の医師に相談して正しい生活指導と治療を受けるようにしてください。


アルバ薬局  新長田店
薬剤師  本川 千寿瑠


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