アルバ会社説明会



第71号 脳梗塞について

2007/11/09

目次:

※ご覧になる項目を上の目次よりお選び下さい。


“脳梗塞について

現在、日本における三大死因は、1.悪性新生物(いわゆるガン)2.心疾患3.脳卒中(のうそっちゅう)と報告されています。このうち、脳卒中は高齢になるほど発症しやすくなるため、高齢化が進むわが国においては、今後さらに増えていくことが予想される病気といえます。
また、脳卒中は、寝たきりになる原因の約3割をも占めており、高齢による衰弱や認知症よりも高い割合で、介護を必要とする状態になりやすい病気です。現在の脳卒中患者数は約150万人といわれ、高血圧・歯周病・糖尿病に次ぐ第4位の多さです。毎年新たに50万人以上が発症していると推測されており、今後その患者数は、高齢者の激増や糖尿病・高脂血症などの生活習慣病の増加により、2020年には300万人を超すことが予想されています。
さらに、わたしたちの医療費の約1割が脳卒中に費やされており、とくに高齢者における医療費では第1位となっています。すなわち、わたしたちが脳卒中について詳しく知っておくことは非常に重要なことだといえます。
脳卒中の6〜7割が脳梗塞(のうこうそく)にあたるので、今回の処方せん豆知識は、脳梗塞についてお話したいと思います。



◇ 脳梗塞とは?

脳梗塞とは、脳の血管が細くなったり、血管に血栓(血のかたまり)が詰まったりして、脳に酸素や栄養が送られなくなるために、脳の細胞が障害を受ける“虚血性(きょけつせい)”の病気です。脳の血管が破れて出血する“出血性”の脳出血と合わせて、脳卒中に分類されています。

    分類 病型 原因
脳卒中 虚血性 脳梗塞 ラクナ梗塞 脳の細い動脈が詰まる
アテローム血栓性脳梗塞 脳の太い動脈が詰まる
心原性脳塞栓 心疾患が原因で、脳の動脈が詰まる
出血性 脳出血 脳内出血(脳出血) 脳の細い動脈が破れて、脳内に出血する
クモ膜下出血 脳の大きな動脈が破れて、脳を覆っているクモ膜と軟膜の間に出血する

脳梗塞は、どこの血管がどのように詰まるかで、次の3種類に分類されています。

■ラクナ梗塞(らくなこうそく)
脳の深いところにある細い血管が詰まって起こるものを、ラクナ梗塞といいます。主に高血圧により起こりやすく、現在わが国で最も多いタイプの脳梗塞です。高血圧の状態が続くことにより、脳の細い血管が損傷を受け、そこに血栓が詰まって起こります。
梗塞により脳細胞が壊死(えし)した部分は空洞になるため、“小さな空洞”を意味するラクナの名がついています。梗塞の大きさは15mm以下のもので、症状は比較的軽いかあるいは無症状の場合もあります。
ラクナ梗塞が起こりやすくなる原因として、高血圧のほか、糖尿病・高脂血症・喫煙・加齢などが考えられています。


ラクナ梗塞
■アテローム血栓性脳梗塞(あてろーむけっせんせいのうこうそく)
動脈硬化などにより、脳の太い血管が狭くなっていき、完全に詰まるか、あるいはその部位に血栓が形成されて閉塞することで起こるものを、アテローム血栓性脳梗塞といいます。
アテロームとは“粥状(じゅくじょう)硬化”のことで、血管にコレステロールなどの脂肪や石灰からなるどろどろの物質(アテローマ)が沈着していくことを意味します。
梗塞はゆっくりと進行するため、ある血管が詰まっても周りから血液が供給され、症状が軽い場合があります。
起こりやすくなる原因としては、高血圧・糖尿病・高脂血症・喫煙・加齢などがあります。


アテローム血栓性脳梗塞
■心原性脳塞栓(しんげんせいのうそくせん)
心房細動*1などの心臓病によりできた血栓(血のかたまり)が、血液の流れに乗って脳に運ばれて脳の血管を詰まらせるものを、心原性脳塞栓といいます。
症状は突然起こり、強い意識障害や麻痺、感覚障害があらわれることがあります。
起こりやすい原因として、心房細動・心臓弁膜症・心筋梗塞・心筋症などの心疾患や加齢などがあげられます。

*1心房細動:心房の筋肉が小刻みに震えるため、脈拍の間隔がバラバラになり、血液の循環が乱れる病気。さまざまな心疾患のなかでも、心房細動はとくに心臓内における血流が遅いため、血栓が出来やすい病気といえます。

心原性脳塞栓


◇ 脳梗塞の症状

脳梗塞の症状は、ほとんどが突然始まり、急速に症状が進んで数分から数時間以内に脳組織が壊死(えし)してしまいます。その後は2〜3日で病状が安定する場合や、数日にわたって進行する場合があります。
脳梗塞の症状は、血液と酸素が不足して障害された部位や大きさに対応して異なります。
また、脳神経は延髄(えんずい)で交差しているため、左脳の障害は右半身に、右脳の障害は左半身に症状が現れます。
主な症状は以下のものです。

《片麻痺》
手足・顔面の運動麻痺(片麻痺)があらわれます。大脳の運動中枢や大脳・脳幹の運動神経の障害によるものです。脳梗塞において一番多く見られる症状です。

《感覚障害》
温度や痛みなどの感覚が鈍くなったり、手足がしびれたりします。大脳の感覚中枢や大脳・脳幹の感覚神経の障害によるものです。実際にこの症状だけで専門医を受診する人はほとんどいません。

《意識障害》
意識がはっきりしないなどの障害があらわれます。大脳の両側や脳幹の障害によるものです。


《構音(こうおん)障害》
ろれつが回らず、うまく喋ることが出来なくなります。筋肉が麻痺した状態で、舌や唇の運動障害によるものです。

《失語(しつご)》
自分の思いを話すことや字を書くことで表現したり、人の話や文字を理解したりすることができなくなります。言語中枢の障害によるものです。

《失行(しっこう)》
運動や感覚の障害はなく、自分がしようとする行為も理解しているのに、日常の動作(たとえば、ボタンをとめる・歯を磨く・服を着るなど)ができなくなります。多くは大脳皮質の障害によっておこります。

《失認(しつにん)》
視覚・聴覚などの感覚障害や知能低下はないのに、対象を認知することができなくなります。右の大脳半球に障害が起こったときによくみられる症状です。通常は左側に注意が行き届かなくなったり、人の顔を認識できなくなったりします。

《同名半盲(どうめいはんもう)》
左または右の視野が半分欠けて見えなくなります。両目の同じ側(すわわち、両目とも左側なら左側の、右側なら右側)の視野が欠けるのが特徴です。大脳の視覚中枢や大脳・脳幹の視神経の障害によるものです。

《嚥下障害(えんげしょうがい)》
飲食物をうまく飲み込めなくなります。誤って気道に入ると、誤嚥性(ごえんせい)の肺炎になることもあります。脳卒中の発作後に比較的みられる症状です。

《その他》
頭痛・嘔吐・めまい・運動失調(麻痺しているわけではないがスムーズに動けない)・痙攣・複視(ものが二重に見える)・健忘・失禁などの症状があらわれることがあります。


◇ 脳梗塞かもしれない5つの症状

脳梗塞はいかに早く治療できるかが鍵を握ります。そのため、わたしたちが脳梗塞の初期症状を知っておくことは、発作後の機能回復のためにも非常に重要なことといえます。たとえその症状が軽い場合や一時的なものであっても、次のような症状がひとつでも出たらすぐに専門医を受診しましょう。

急に左右どちらかの顔・手足がしびれる・動かなくなる・感覚がなくなる
急にろれつが回らなくなる・錯乱してうまく言葉が出なくなる・人の話すことが理解できなくなる
急に片方あるいは両方の目がぼやけて見えにくくなる・視野が狭くなる
急にふらついて転倒する・力はあるのにバランスがとれず歩けない・手足がうまく動かせない
急な原因不明の激しい痛み・頭痛


◇ 薬物治療

脳梗塞の治療は、詰まっている血栓を除去する急性期と、再発を予防する慢性期とに分かれます。

急性期の薬物治療としては、まず血管内に詰まった血栓を溶かすことが重要です。血栓はフィブリンという物質でつくられています。近年保険適用となった
血栓溶解薬である組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)は、血栓のフィブリンを分解して血栓を溶かします。この薬物は脳梗塞発症後3時間以内でなければ投与できないなどのさまざまな使用制限がありますが、その効果はかなり高く、投与された患者の約3割は、脳梗塞を発症する前とほとんど同じ状態まで回復するといわれています。
そのほか、脳梗塞の病型にあわせて抗凝固薬や抗血小板薬が処方されます。

■ラクナ梗塞
急性期
《抗血小板薬》オザグレルナトリウム (注射)
  トロンボキサン(TX)合成酵素を阻害して、強力な血小板凝集促進作用と血管収縮作用をもつトロンボキサンA2(TXA2)の産生を抑制する薬です。

《神経保護薬》 エダラボン (注射)
脳が虚血状態になると増えるフリーラジカルを消去して、脳細胞の障害を抑制する薬です。

慢性期(再発予防)
《抗血小板薬》 シロスタゾール
ホスホジエステラーゼ3(PDE3)の活性を阻害することにより、血小板凝集を抑制したり、血管を拡張させたりする薬です。

また、ラクナ梗塞においては降圧することが最も重要であるため、高血圧治療も同時に行います。

■アテローム血栓性脳梗塞
急性期
《抗凝固薬》 アルガトロバン (注射)
フィブリンを生成するトロンビンの作用を阻害することで、血液凝固・血小板凝集・血管収縮を抑える薬です。発症後48時間以内に投与されます。

《神経保護薬》 エダラボン (注射)
脳が虚血状態になると増えるフリーラジカルを消去して、脳細胞の障害を抑制する薬です。

慢性期(再発予防)
《抗血小板薬》 硫酸クロピドグレル・塩酸チクロピジンなど
アデノシン二リン酸(ADP)受容体に結合することで血小板の凝集を抑制する薬です。

《抗血小板薬》 アスピリンなど
シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し、TXA2の産生を抑制することで血小板凝集を抑制する薬です。

さらに、血液中のアテローム沈着を抑制する目的で、同時に高脂血症や糖尿病の治療も行います。

■心原性脳塞栓症
急性期
《抗凝固薬》 ヘパリン (注射)
血液中のアンチトロンビンIIIと複合体を形成して、フィブリンを形成するトロンビンなどの働きを抑え、血液凝固を抑制する薬です。

《神経保護薬》 エダラボン (注射)
脳が虚血状態になると増えるフリーラジカルを消去して、脳細胞の障害を抑制する薬です。

慢性期(再発予防)
《抗凝固薬》 ワーファリン
ビタミンKと拮抗することで、肝臓におけるビタミンKが関与するプロトロンビンなどの生合成を抑制し、トロンビンの生成を抑えることで血液凝固・血栓形成を抑制する薬です。
ワーファリンは、服用し始めてから作用が安定するまで時間がかかるほか、効き方に個人差があるため、定期的に検査しながら決められた量を服用する必要があります。また、納豆・クロレラなどビタミンKを多く含む食品と一緒にとることでワーファリンの作用が減弱するなど、多くの薬剤や食品との相互作用が認められているので注意が必要です。

さらに、心原性塞栓症では、危険因子となる心房細動を抑制するための治療も同時に行います。


療法 ラクナ梗塞 アテローム血栓性
脳梗塞
心原性脳塞栓
急性期 抗血栓
【注射】
オザグレル
ナトリウム
アルガトロバン ヘパリン
ナトリウム
神経保護
【注射】
エダラボン
慢性期 抗血栓
【内服】
シロスタゾール
(プレタールなど)
硫酸クロピドグレル
(プラビックス)
塩酸チクロピジン
(パナルジンなど)
アスピリン
(バイアスピリン)
アスピリン・ダイアルミネート
(バファリン81mgなど)
ワルファリンカリウム
(ワーファリンなど)
危険因子の
コントロール
高血圧の治療 高脂血症の治療
糖尿病の治療
心房細動の抑制


◇ 脳梗塞は予防から

脳梗塞は、何においても予防することが一番大切です。また、一度脳梗塞を起こすと再発しやすく、発症後5年間で30〜50%の人が再発するといわれています。脳梗塞にならないために、また再発防止のために、次のことに注意しましょう。

■危険因子をコントロールする


脳梗塞を予防する最大のポイントは、高血圧・糖尿病・高脂血症・心疾患・喫煙・多量の飲酒といった危険因子を減らすことです。なかでも、高血圧は一番の危険因子です。患者さんの約半分は、高血圧の治療中に発症しています。また、血圧をきちんと管理し、禁煙することで脳梗塞のリスクは小さくなることが分かっています。


■日常の生活習慣に注意する


次にあげる項目について日常生活を見直し、危険因子をコントロールするよう心がけましょう。

■肥満の解消に心がける
肥満は、高血圧・糖尿病・高脂血症などさまざまな生活習慣病の引き金になります。脳梗塞の危険因子を減らすためにも、肥満にならないよう注意しましょう。

■適度な運動を続ける

適度な運動は、肥満を防止するだけでなく、血流がよくなるので効果的です。体力にあった運動を毎日続けるようにしましょう。


■塩分・脂肪の摂取を控える/カロリーを取りすぎないようにする
塩分のとりすぎは高血圧を、脂肪のとりすぎは高脂血症を引き起こします。またカロリーのとりすぎは肥満につながるので、腹八分目を心がけましょう。

■禁煙や節酒に努める
タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させることで血圧が上昇しやすくなるほか、血管を傷つけ、動脈硬化になりやすくなります。また、少量の飲酒は動脈硬化の予防によいとする報告もありますが、大量の飲酒では不整脈や心筋障害などが起こりやすくなります。
脳梗塞の予防のためには禁煙はもちろんのこと、お酒も控えめにお願いします!!

■脱水に注意する
脱水症状になると、血液が濃くなるため血栓ができやすくなります。とくに夏の多汗・嘔吐・下痢・発熱時には水分摂取を心がけましょう。

■急激な温度変化を避ける
暖かいところから寒いところへ移動するなど、急に気温が変化すると、血管が収縮して血圧が上昇しやすいので危険です。冬場・外出時はもちろんのこと、湯上り・トイレなど部屋の温度差にも注意しましょう。これからの寒い時期は、トイレや脱衣所も暖かくしておくとよいでしょう。

■入浴する

入浴することで血流がよくなります。ただし、お湯の温度は38〜40度とぬるめにし、長湯しないようにしましょう。水分補給するとよいでしょう。

■排便時に力まない

排便するときに力むと、血圧が急に上がるので注意が必要です。便秘がひどい場合は緩下剤などを服用するとよいでしょう。


■ストレスや疲労をためない

ストレスや緊張状態は血圧を上昇させるので、ストレスや疲労をためないことが予防につながります。


■毎日血圧を測定する
毎日決まった時間に血圧を測り、自分の平均血圧を知っておきましょう。そのうえで、日頃から血圧の変動に注意しておくことが大切です。

■定期的に検査を受ける


定期的に健康診断や専門的な検査を受けることは、脳梗塞の早期発見につながります。




まとめ

先にも述べたように、脳梗塞を含む脳卒中は、その後寝たきりになったり介護を必要とする状態になったりする最大の原因といわれています。脳梗塞になってから治療で機能回復をはかるよりも、脳梗塞にならないように普段の生活から心がけることをおすすめします。
また、脳梗塞は少しでも早く適切な治療が行われることが重要で、これは後遺症の軽減にもつながります。おかしいなと思う症状が見られたら、すぐに専門医を受診しましょう。

最近では、わざわざ大きな病院に行かなくても、脳外科専門の診療所でも十分な検査が受けられるようになりました。近所の専門医を探しておくことをおすすめします。
アルバ薬局  鈴蘭台店
薬剤師  岸本 寿美


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