アルバ会社説明会



第74号 蕁麻疹(じんましん)

2008/3/18

目次:

※ご覧になる項目を上の目次よりお選び下さい。


“蕁麻疹(じんましん)について

今回の処方せん豆知識は、約15〜20%の人が一生のうち1回は経験し、現在人口の約0.1%が罹患しているといわれている「蕁麻疹(じんましん)」について触れることにします。


◇ 蕁麻疹とは

蚊に刺されたときのように赤くくっきりと盛り上がり(膨疹:ぼうしん)、しばらくすると跡形もなく消える皮膚疾患で、突然出現して,すぐに消えるのが特徴です。皮膚の毛細血管が膨らむため、赤く見えます。また、血液中の血漿成分(血液の50〜60%を占める液体の部分)が血管外へしみ出てくるため、皮膚が盛り上がってきます。大抵は痒みを伴いますが、チクチクとした痒みに似た感じや焼けるような感じを伴うこともあります。人が茎や葉にとげがあるイラクサ(蕁麻:じんま)に触れると同様の皮膚症状が起こることからこの名前がつきました。
これらの症状は通常、数十分から数時間以内に消えますが、長いときは半日から一日くらい続くこともあります。また、膨疹(皮膚の盛り上がり)の大きさは1〜3mm程度のものから手足全体位のものまで様々で、形も「円形」・「楕円形」・「線状」・「花びら状」・「地図状」などいろいろな形で現れます。



◇ 蕁麻疹の原因

皮膚の血管や血管の周囲には、炎症や免疫反応に関係する肥満細胞とよばれる細胞が散在しており、この肥満細胞の中にはヒスタミンという成分が多数含まれています。



原因となる物質(アレルゲン:抗原)が、肥満細胞上のIgE抗体と結合すると、肥満細胞からヒスタミンが分泌されます。このヒスタミンが血管に働いて、血管を拡張させるとともに、血管の透過性が亢進し、血管外への血漿成分の漏出を起こさせます。これが膨疹です。さらに、ヒスタミンは皮膚の神経を直接的に刺激し、かゆみを誘発します。
したがって、蕁麻疹治療は、蕁麻疹の原因であるヒスタミンの働きを抑えることがキーとなります。



◇ 蕁麻疹の種類

経過時間による分類

蕁麻疹は数十分から数時間以内に次第に消えてなくなりますが、再発を繰り返すこともあります。蕁麻疹の発症が1日あるいは数日で終わるものを「急性蕁麻疹」といい、1ヶ月以上続くものを「慢性蕁麻疹」といいます。急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹とでは、症状の違いはありませんが、一般的に、急性蕁麻疹の場合は「アレルギー性」が多く、慢性蕁麻疹の場合は「非アレルギー性」が多いといわれています。

原因による分類



1.アレルギー性蕁麻疹

特定の食物・花粉などの空気中の浮遊物質・薬品・ハチなどの昆虫に刺されるなどが原因で引き起こされる蕁麻疹です。

植物性アレルゲン
サバ・サンマ・マグロ・エビ・カニ・卵・牛乳・ナッツ・チョコレート・ソバ・食品添加物など
吸入性アレルゲン
花粉・ハウスダスト・ペットの毛やフケなど
薬剤アレルゲン
抗生物質・アスピリン・ホルモン剤など
刺咬性アレルゲン
ハチの毒・ムカデの毒など

治療薬としては、アナフィラキシー(一種のショック症状)などを伴う場合でなければ、抗ヒスタミン薬の投与を行います。

2.コリン性蕁麻疹

入浴などの温熱刺激や運動・精神的緊張などにより、汗が出るときにあらわれる蕁麻疹です。皮疹の大きさは1〜4mmと小さいことが特徴です。痒みに加えて、ピリピリとした痛みを伴う場合があります。一過性で汗をかくたびに蕁麻疹の症状がでます。通常は、30分〜1時間で消失します。
治療方法としては、抗ヒスタミン薬を第1選択薬として使用します。また、コリン性蕁麻疹は自律神経と深い関係を持っているため、神経症による不安などに用いられるアタラックス(一般名:ヒドロキシジン)が使用されることも多いようです。


3.日光蕁麻疹

日光が当たった部位にのみ、当たった直後から膨疹があらわれる蕁麻疹です。日光にさらされて数分で蕁麻疹があらわれますが、日光に当たらない状態になると1〜2時間以内に消失します。
対症療法として、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬の内服もありますが、通常の蕁麻疹と比べると効果は乏しいです。日光蕁麻疹は、解明されていない点が多く、自己免疫疾患と考えられています。食物性などと違い、アレルゲンそのものを回避することは不可能です。帽子・衣類・手袋などによる物理的遮光が必要となります。

4.温熱蕁麻疹

温水や温風のような暖かい刺激を受けた部位にできる蕁麻疹です。皮膚の赤味とわずかな腫れ、強いかゆみをともないます。

5.寒冷蕁麻疹

冷たい水や冷たい風などによって皮膚の温度が急激に低下することで引き起こされる蕁麻疹です。また、冷たい飲み物をいっきに飲んだときに唇や舌にあらわれることがあります。鳥肌ににていますが、痒みをともなうときは寒冷蕁麻疹が疑われます。寒い所に行く時には肌の露出を減らし、冷たい風に直接さらされないよう気をつけましょう。また、プールに入る時は徐々に体を慣らし、冷たい飲み物を飲む時には一気に飲まないようにしましょう。

6.機械性蕁麻疹

時計のバンド・ベルト・下着のゴム・アクセサリーの金属類の接触部分・バッグを持っていた手首などのように皮膚が機械的にこすれたり、締め付けられたりする部分に出来る蕁麻疹です。真皮の微細血管の周辺にある肥満細胞の細胞壁からヒスタミンが刺激を受けたことで、放出されることによって起こります。
軽度であれば、治療の必要はありませんが、衣服がこすれただけでも蕁麻疹が出来る場合は、抗ヒスタミン薬の内服を行います。

7.その他

精神的ストレスによって起こる「心因性蕁麻疹」、扁桃腺炎・虫歯・副鼻腔炎などが原因となる「病巣感染による蕁麻疹」などがあります。
※病巣(びょうそう)とは、細菌などによって軽い炎症を起こしている箇所のこと。


◇ 蕁麻疹の診断と検査

1.問診

蕁麻疹の原因は簡単に検査で特定できない場合が多いので、問診はとても重要です。
食べ物が疑われれば、発疹の現れる前に食べた食品の種類・鮮度・保存法・調理法・調理者などが重要なチェック項目となります。また過去、食品による発疹があったかどうかも重要です。
薬剤性が疑われる場合は、薬剤の種類や過去蕁麻疹様の発疹が薬物によって出たことがあるかなどを確認します。
物理的な刺激が疑われる場合は、いつどんなときに生じたかを特定するために、住居や職場の環境・仕事の内容・身につけている下着や装身具・発症するときに触れたものはないか、花粉やダニによるアレルギーで受診したことがあるか、心理的なストレスがないかなども重要なチェック項目となります。

2.蕁麻疹の原因を特定するための検査

検査法
解説
血液検査
RAST法
血液検査で抗原に特異的なIgE抗体を調べます。
ヒスタミン遊離試験
血液に原因と思われる物質を注入し、アレルギーの原因となるヒスタミンが増加するかを見る検査です。
皮膚テスト
皮内試験
皮膚内にアレルゲンエキスを注射し、その後の反応を見ます。
スクラッチテスト
プリックテスト
抗原抽出液(アレルゲンエキス)を皮膚表面に滴下し、針先で皮膚に出血しない程度の擦り傷をつけ、15〜20分後に反応をしらべます。真皮上層の肥満細胞表面に抗原特異的IgE抗体が存在すれば、滴下した抗原と反応し、肥満細胞内のヒスタミンや化学伝達物質が放出され、局所が赤く腫れます。
誘発試験 寒冷負荷試験 氷水を入れたビニール袋や試験管を皮膚に触れさせ、蕁麻疹の再現を確認します。
温熱負荷試験 お湯の入った試験管を5分程皮膚に触れさせ、蕁麻疹の再現を確認します。
運動負荷試験 階段を上り下りさせたりして発汗させ、発疹が出るかをチェックします。陽性の場合はコリン性蕁麻疹の可能性が強くなります。
光過敏症試験 波長紫外線(UVB)、長波長紫外線(UVA)、可視光線などによる照射試験です。日光蕁麻疹に対して行われます。


◇ 蕁麻疹の治療薬

一般的に使用される内用薬としては、抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬・ステロイド薬、外用薬としては、抗ヒスタミン外用薬・ステロイド薬があります。

内服薬
分類
商品名(一般名) ポイント
抗ヒスタミン薬
(第1世代)
ポララミン(D-マレイン酸クロルフェニラミン)
タベジール(フマル酸クレマスチン)など
副作用として眠気があります。車などの運転をする時には、服用を避けた方がいい薬です。





|

抗ヒスタミン薬
(第2世代)
ザジテン(フマル酸ケトチフェン)
アゼプチン(塩酸アゼラスチン)
セルテクト(オキサトミド)
アレジオン(塩酸エピナスチン)
エバステル(エバスチン)
ジルテック(塩酸セチリジン)
タリオン(ベシル酸ベポタスチン)
アレグラ(フェキソフェナジン)
アレロック(塩酸オロパタジン)
クラリチン(ロラタジン)など
副作用として眠気があります。車などの運転をする時には、服用を避けた方がいい薬です。
第1世代の抗ヒスタミン薬と比べて、眠気が少ない。
ステロイド薬
プレドニン(プレドニゾロン)
デカドロン(デキサメサゾン)など
抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬で治らない場合に使用されます。
その他 セレスタミン 抗ヒスタミン薬とステロイド薬が配合されており、痒みと炎症に効果があります。

外用薬
分類
商品名(一般名) ポイント
抗ヒスタミン薬 ベナパスタ
(ラウリル硫酸ジフェンヒドラミン)
レスタミン(ジフェンヒドラミン)など
赤みと痒みを抑えるために、蕁麻疹の湿疹部分に直接塗ります。
ステロイド薬 ロコイド(酪酸ヒドロコルチゾン)など 蕁麻疹がひどい時に使用します。


◇ 日常生活の注意事項

■ 食事

蕁麻疹の原因となる食物などが特定できている場合は、特定されている食物は避けるようにしてください。しかし、それらを全て厳しく制限することには限界がありますので、症状の程度を見ながら、かかりつけの医師と相談して制限するとよいでしょう。
また、ヒスタミンを多く含む食品(魚介類・セロリ・ほうれん草・たけのこ・バナナ・チョコレート・チーズ・赤ワイン・食品添加物など)を控えましょう。

■ 入浴

原則として問題はありませんが、コリン性蕁麻疹や温熱蕁麻疹は、入浴が原因になることもあります。その他、一般的に蕁麻疹の症状は、温まると血管が拡張するため悪化することが多いです。
蕁麻疹が出ているときはシャワー程度にしておきましょう。また、皮膚のこすりすぎは、機械性蕁麻疹の誘発にもなりますので注意しましょう。

■ 衣服

機械性蕁麻疹は、下着やベルトなどで締め付けられることによる圧迫や機械的刺激を受けた部位にのみに皮疹が生じます。同じ場所が長時間圧迫・刺激されることで起こりやすくなりますので、そのような症状が認められた場合には、ゆったりとした衣服や下着を着用するなどの工夫をしましょう。

■ 日光

日光による蕁麻疹が認められる場合は、外出時間の工夫や、帽子・衣類・手袋などによる物理的な遮光をお勧めします。

■ 睡眠

睡眠不足による体調のくずれは、どのタイプの蕁麻疹も引き起こしやすくなります。特に、疲労や寝不足による蕁麻疹は夕方に起こります。決まった時間の就寝と十分な睡眠を心がけましょう。

■ ストレス

ストレスが原因で、蕁麻疹が誘発されたり増悪したりすることがあります。また、ストレスは他の病気の誘発にも関連していますので、出来るだけストレスを溜めないよう日常生活を工夫し、主治医とよく相談するようにしましょう。


まとめ

蕁麻疹は非常に身近な皮膚疾患ですが、数ヶ月あるいは数年にわたり蕁麻疹の出没を繰り返す場合も珍しくありません。原因が特定されている場合は、その原因を避けている限り蕁麻疹は起こりませんが、食事・入浴・日光・運動など避けづらい場合も多々あります。また、慢性蕁麻疹のように原因がはっきりと特定できない場合でも、多くの場合、薬を服用していれば症状はおさまります。このような場合、長期に薬を服用することになりますが、症状を上手くコントロールしていくことで、薬の服用量や回数を減らすことは可能ですし、薬を中止できる場合もよくあります。何れにしても蕁麻疹が発症したら、早期に原因を見つけることが出来るよう、早めに皮膚科を受診し、主治医の指示に従うことをお勧めします。

朝陽薬局  甲東園店
薬剤師  瀧本 浩之


copyright(c)2006 alba-pharmacy, all right reserved.