アルバ会社説明会



第76号 慢性閉塞性肺疾患(COPD)について

2008/6/20

目次:

※ご覧になる項目を上の目次よりお選び下さい。


慢性閉塞性肺疾患(COPD)について

5月31日は世界禁煙デーでした。喫煙は、さまざまな病気を引き起こす原因になることが分かっています。特に、今回ご紹介する「慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)」は、喫煙が最大の原因である疾患です。慢性閉塞性肺疾患は、英語でChronic Obstructive Pulmonary Diseaseといい、略して「COPD(シーオーピーディー)」と呼ばれています。
実際、COPD患者の約90%が喫煙者です。1日の喫煙量が多いほど、喫煙年数が長いほど、また喫煙開始年齢が早いほど、COPDになりやすいことがわかっています。つまり、喫煙習慣が長いほど発症する可能性が高まるため、COPDは"肺の生活習慣病"といわれているのです。
また、喫煙者がCOPDになる可能性は、高齢になるほど高くなることも分かっています。40歳代ではわずか2.9%の可能性が、70歳代では19.6%にまで高まります(2004年調べ)。わが国は、他の国と比べて喫煙率が高いだけでなく、高齢社会であるため、今後COPDの患者はさらに増加するものと見込まれています。
世界的に見ても、COPDの患者数は年々増加しています。WHO(世界保健機構)によると、遅くとも2020年には、COPDは世界における死亡原因の第3位に上がるとして、以下のように予想されています。

世界における死亡原因
1990年 2004年 2030年(予想)
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虚血性心疾患
脳血管障害
下部呼吸器感染症
下痢性疾患
分娩に伴う障害
慢性閉塞性肺疾患
結核
麻疹
交通事故
呼吸器癌
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虚血性心疾患
脳血管障害
下部呼吸器感染症
慢性閉塞性肺疾患
下痢性疾患
HIV/AIDS
結核
呼吸器癌
交通事故
分娩に伴う障害

1.
2.
3.
4.
5.
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7.
8.
9.
10.
虚血性心疾患
脳血管障害
慢性閉塞性肺疾患
下部呼吸器感染症
交通事故
呼吸器癌
糖尿病
高血圧に伴う心疾患
胃癌
HIV/AIDS

そこで、今回の処方せん豆知識では、慢性閉塞性肺疾患のことをしっかり理解していただき、喫煙者には禁煙の意志を固めていただきたいと思います。


◇ 慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは

慢性閉塞性肺疾患は、タバコの煙や大気中の有害な空気を吸い込むことによって、空気の通り道である気管支や肺に障害がおきて、呼吸がしにくくなる病気です。以前は「慢性気管支炎」や「肺気腫」に分けられていましたが、現在はまとめてCOPDと呼ばれています。


慢性気管支炎
広い範囲にわたる気管支の慢性的な炎症により、気管支の壁が厚くなり、空気の流れが悪くなります。
また、粘液の分泌が増加するため、咳や痰が出やすくなります。持続性または反復性の痰を伴う咳が毎年3ヶ月以上、2年以上連続して続く状態です。
気管支に痰がつまると、細菌やウイルスが進入しやすくなるため、感染症にも注意が必要です。
肺気腫
末端の気管支がつぶれるなどで、吸った空気が十分に吐き出せないために、異常に残った空気で、広い範囲にわたって肺胞がふくらんで破壊され、肺全体が腫れ上がった状態です。



◇ COPDによる肺の変化

わたしたちの肺は、主に気管支と肺胞で構成されています。肺胞はブドウのように連なった房の形をしており、その周りを流れる毛細血管とガス交換を行います。すなわち、空気中の酸素と血液中の二酸化炭素が交換され、空気がスムーズに出入りすることでわたしたちは呼吸しています。
COPDになった肺では、肺胞は破壊されてつながり、大きな袋状になります。肺そのものの弾力性や収縮性が低下し、肺胞の表面積が小さくなるため、血管で十分な酸素を受け取れなくなります。

また、気管支の壁が厚く腫れて内部が狭くなり、吸った空気が出て行きづらくなります。したがって、呼吸がしづらくなって息切れしたり、分泌物が増えて痰や咳がしつこく出たりするのです。


◇ COPDの主な原因

先に述べたとおり、最大の原因は喫煙です。また、非喫煙者であっても、周囲にいる喫煙者のタバコの煙によりCOPDにかかることもあります。
そのほか、大気汚染(自動車の排気ガス・発電所や石油精製などの工場から排出されるガスなど)や職業的な塵埃・化学物質などがあります。
また、非常にまれですが、「
α1-AT欠損症」という遺伝的な原因で発症することもあります。


COPDの主な症状

COPDはゆっくり進行する病気です。風邪をひいていないのに咳や痰がでて、しつこく続きます。次第に階段や坂道の上り下りなどちょっとした動作で息切れするようになり、日常生活に支障をきたし始めます。さらに症状が重症化すると、呼吸不全になったり全身に障害があらわれたりすることもあります。
また、症状が進むと、「口すぼめ呼吸」や「ビア樽状の胸部」などの身体の変化が見られるようになります。

主な自覚症状 慢性の咳や痰
喘鳴(ぜいぜいする)
息切れ
呼吸困難(重症になると)など
 
身体の変化 口すぼめ呼吸
(息切れを感じたときに、口をすぼめて呼吸をしてしまう)
ビア樽状胸部
(胸の前後の幅が増えて、上半身が樽のような形になる)
体重減少など


COPDチェック!

次にあげる項目にいくつか当てはまる場合は、一度医療機関で検査することをおすすめします。


40歳以上

現在タバコをすっている(以前すっていた)

「1日のタバコの本数」×「喫煙年数」=「喫煙指数」
喫煙指数が700を超える(以前の喫煙指数が越えた)

息切れしやすい

階段の上り下りだけでも呼吸がつらい

しつこく咳が続いている

痰がよく絡む

風邪をひいていなくても痰が絡むことがある



COPDを診断するための検査

残念ながら、いったんCOPDで低下した肺の機能は、元に戻すことはできません。したがって、できるだけ早い時期に診断を受け、できるだけ早く治療を開始することが大切です。
COPDの診断にはスパイロ検査が行われます。そのほか、他の病気と区別するためにさまざまな検査をする場合もあります。

■スパイロ検査

スパイロメーターという肺活量をはかる医療器機で、呼吸機能の状態を調べます。
できる限り深く息を吸い込んで、思い切り強く、最後まで空気を吐き出し、「努力肺活量(FVC)」を測定します。そのうち、最初の1秒間に吐き出す空気の量「1秒量(FEV
)」が努力肺活量に占める割合「1秒率(FEV%)」を出します。この1秒率が70%を下回ると、COPDの可能性があると診断されます。

1秒率(FEV%)={1秒量(FEV)/努力肺活量(FVC)}×100

1秒率 < 70% → COPD

1秒量(FEV)・・・最初の1秒間に吐き出せる息の量
努力肺活量(FVC)・・・最大まで吸ったあとに強く吐き出した息の最大量




■その他の検査

X線検査(レントゲン)で肺や横隔膜の状態を調べます。また、CT検査では血管の状態を調べます。
その他にも、動脈血の酸素濃度を測ったり、心電図検査をおこなったりすることもあります。




COPDの管理と治療

COPDで壊れた肺の組織や機能は、元に戻すことはできません。しかし、適切な管理と治療を行えば、病気を今以上に悪化させないようにすることはもちろん、自覚症状を軽くし、日常生活を無理なく送れるようにすることができます。
COPDの治療は、その進行具合によって異なります。性別・年齢・身長から求めた1秒量の予測値に対する実測値の割合「%1秒量(%FEV
)」で、病期を5段階に分け、それぞれの症状に合わせた管理と治療が行われます。



■禁煙

何はさておき、まずは禁煙をすることが重要です。COPD治療の基本であり、全ての患者さんに推奨されます。
COPDでなくても、年齢とともに呼吸機能は低下します。しかし、COPDになってからでも禁煙を行えば、約2年で喫煙していなかった人と同程度の呼吸機能低下率になることが分かっています。禁煙するだけでも、呼吸機能の低下が抑えられるということです。
COPDの患者さんの多くは喫煙者ですが、実は、喫煙しない人でも、4.7%の人がCOPDにかかっています。家族や周りの人たちのためにも、禁煙を第一に実行しましょう。
禁煙したくてもなかなかできない人には、医師と二人三脚でとりくめる「禁煙外来」や「禁煙教室」をお奨めします。従来のニコチンガムやニコチンパップに加え、先日、チャンピックス錠という内服薬が発売されました。詳しくは医師に相談してください。

■ワクチン接種

COPDの患者さんは、風邪やインフルエンザなどにかかると、肺や気管支の症状が急激に悪化(急性増悪:きゅうせいぞうあく)する危険性があります。いったん重症化すると、治療により症状は改善しても、呼吸機能は以前より低下したまま戻りません。
しかし、インフルエンザワクチンの接種により、COPD増悪による死亡率が半減することがわかっています。これらの感染を防ぐためにも、重症度にかかわらず、インフルエンザワクチンの接種を受けましょう。 
また、うがい・手洗いをするなど、普段から風邪やインフルエンザにかからないよう注意してください。

■薬物療法

COPDそのものを治す薬はありません。あくまで、息切れや呼吸困難などの症状を和らげる薬が主になります。重症度にあわせて、気管支拡張薬・吸入ステロイド薬・去痰薬などが用いられます。

分類 代表的な薬名 作用・特徴






抗コリン薬
(吸入)
アトロベント
テルシガン
スピリーバなど
気道の閉塞を引き起こすアセチルコリンの働きを抑えて、太い気管支を広げます。
前立腺肥大や緑内障の人は避けてください。
スピリーバは長時間作用型で、1日1回の吸入で24時間効果が持続します。
β2刺激薬 吸入 サルタノール
ベネトリン
アロテック
ストメリンD
ベロテック
メプチン
セレベントなど
交感神経のβ2受容体を刺激することで、細い気管支を広げます。
セレベントは長時間型、それ以外は短時間型です。
長期間の管理には長時間型を用います。
短時間型吸入は作用発現が早いため、増悪時などに効果的です。
経口 アトック
スピロペント
ブリカニール
ブロンコリン
ベネトリン
ホクナリン
メプチンなど
吸入にくらべ、作用発現まで時間がかかります。
何らかの原因で吸入薬が使えない場合に服用します。
貼付 ホクナリンなど 1日1回の貼付で、持続的に効果を発揮します。
アトピーなど皮膚の弱い人は、かぶれやすいので注意が必要です。
キサンチン
誘導体
テオドール
テオロング
ユニフィルなど
気管支平滑筋に作用して、気管支を広げます。
有効血中濃度が狭いので、血中濃度のモニタリングが必要です。
吸入ステロイド アルデシン
キュバール
パルミコート
フルタイドなど
気道の炎症とアレルギーを抑える作用があります。
毎日使用することで、増悪回数を減らし、悪化を遅らせることが可能になります。
去痰薬 経口 クリアナール
ビソルボン
ムコソルバン
ムコダインなど
痰を出しやすくしたり、痰の量を調節したりする作用があります。
ビソルボン:気道分泌液増加作用。
クリアナール・ムコダイン:気道粘液修復作用。
ムコソルバン:気道液の分泌促進と線毛運動亢進作用。
吸入 ビソルボン
ムコフィリンなど
抗菌薬 細菌感染による症状の悪化を予防します。

■呼吸リハビリテーション

呼吸リハビリテーションを日常に取り入れることで、病状を安定させ、残っている呼吸機能を最大限に効果的に利用し、日常生活や社会活動を改善・向上・持続させることを目的としています。
チーム医療のひとつで、医師をはじめ看護師・薬剤師・理学療法士・栄養士などの医療スタッフにより、共同でCOPD患者さんのQOL(生活の質)をよくするために取り組みます。

〜呼吸リハビリテーションの定義〜

呼吸器の病気によって生じた障害を持つ患者に対して、可能な限り機能を回復あるいは維持させ、これにより、患者自身が自立できるように継続的に支援していくための医療

1. 理学療法
呼吸に関する筋力をきたえることで、効率よく呼吸し、息苦しさをやわらげます。呼吸方法には「口すぼめ呼吸」や「腹式呼吸」があります。

2. 運動療法
息切れを避けて運動不足になると、運動機能が低下してさらに呼吸困難が悪化しやすくなります。症状にあわせてウォーキングなどの有酸素運動を行い、運動に対する肺の耐容能を高めます。

3. 栄養管理
同じ呼吸をしても、COPDの患者さんは健康な人よりも多くのエネルギーを消費します。体重が減りやすいだけでなく、感染症にかかりやすくなるため、体力をつける目的で高たんぱく・高カロリーの食事をとるようにします。


■在宅酸素療法

肺の機能が低下してくると、体に酸素をうまく取り込めなくなるため、普通の呼吸では低酸素状態になってしまいます。低酸素血症の状態が長く続くと、継続的に酸素の補給ができないので、心臓に大きな負担がかかります。
低酸素血症の患者さんには、酸素の供給器具を用いて、継続的に酸素を吸入できるようにします。携帯用の酸素ボンベもあり、外出や旅行も可能です。


まとめ

COPDのことをきちんと理解していただけましたか?
COPDは、ゆっくりと確実に進行する病気ですが、けっして安静にしていなければいけない病気ではありません。症状に見合った適切な治療を受けて、健康な人と変わらない充実した生活を送っていきましょう。
また、昔タバコを吸っていた、あるいは現在タバコをすっている人、なんでもない動作ですぐに息切れする人、咳が長く続いて気になっている人は、ぜひ病院で診察を受けることをお奨めします。
アルバ薬局  甲南病院前店
薬剤師  中嶋 りつ子


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