アルバ会社説明会



第77号 アルツハイマー型認知症について

2008/7/28

目次:

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“アルツハイマー型認知症について

誰にでも、忘れてしまったり思い出せなかったりすることはあります。しかし認知症は、年をとって忘れっぽくなることとは異なり、病気によるもの忘れのことをいいます。
アルツハイマー型認知症をはじめとする認知症は、65歳以上の高齢者に多く見られる疾患です。日本の高齢化と平均寿命の延びに伴い、わが国における認知症の患者は年々増加しており、2005年時点で約170万人にのぼるといわれています。85歳以上の高齢者では4人に1人が認知症患者だと推定されています。このまま進めば、認知症の患者数は2020年には300万人近くまで増加するといわれています。

今回の処方せん豆知識では、認知症の約5割を占める「アルツハイマー型認知症」についてお話いたします。アルツハイマー型認知症は、治すことは難しい病気ですが、できるだけ早く発見して適切な治療をすることで、症状を改善させたり進行を遅らせたりすることができます。早めの診察を受けるためにも、アルツハイマー型認知症について知っていただきたいと思います。




◇ アルツハイマー型認知症とは

アルツハイマー型認知症とは、脳のいたるところで神経細胞が破壊され、脳の萎縮(いしゅく)が起こることで、記憶・思考・判断などの精神機能が障害される疾患です。

脳の神経細胞は、誰でも加齢とともに減っていきますが、アルツハイマー型認知症の脳では早期に急激に減ってしまいます。特に、記憶に関係する“海馬(かいば)”といわれる部分の神経細胞が失われるため、もの忘れが主症状としてあらわれます。
加齢による記憶力の低下では体験の一部を忘れるにとどまりますが、認知症では体験のすべてを覚えていません。また、症状を自覚していない場合、忘れたこと・覚えていないことを否定して、不安やいらつきなどの精神的な症状があらわれます。そのほか、会話の能力低下もみられます。しかし、運動障害や感覚障害はあまり目立ちません。
発症の原因について、現在のところ詳しいことは分かっていません。ただ、アルツハイマー型認知症の患者の脳では、ベータアミロイドという異常な蛋白質が非常に多く存在することが確認されています。ベータアミロイドが沈着したところは、老人斑(ろうじんはん)と呼ばれるシミのようなものがみられます。老人斑は、単なる老化した脳でもしばしば見られるものですが、アルツハイマー型認知症患者の脳では早い段階から多く確認されています。
また、タウという不溶性の蛋白質により、神経原線維が変化して糸くずを束ねたようなものになり、神経細胞に蓄積したものもみられます。これらの蛋白質は、脳の萎縮が始まるずっと以前から存在します。ベータアミロイドが蓄積し始めてから数十年して、アルツハイマー型認知症が発症するともいわれています。


◇ 症状について

アルツハイマー型認知症は、本人も一緒に生活している家族でも気づかないうちに、いつのまにか発症します。ゆっくりと進行し、時間とともに悪化していきます。

■こんな症状が気になりませんか

アルツハイマー型認知症はゆっくりと進行するため、発見が遅れがちです。もの忘れ・やる気の低下など、次にあげる症状が思い当たる場合は、認知症の疑いがあります。早めに病院で診察を受けることをおすすめします。


あいさつなどに対する反応が遅い。

今までてきぱきとできていた動作がもたもたするようになった。

ぼんやりしている時間が多い。

これまで興味のあったものに集中していない。

日課をしなくなった。

身だしなみに気をつかわなくなった。

ものの名前が出てこない。

言葉が短くなった。

同じことを繰り返し尋ねるようになった。

会話のつじつまが合わない。

作り話をする。

食事をしたことを忘れてしまう。

今日の日付と曜日・自分の年齢・今いる場所などが言えない。

慣れているはずの自分の家や部屋が分からない。

身近な人の顔がよく分からない。

大事なものを置き忘れ、探し物ばかりしている。

同じものを何度も買ってくる。

簡単なお金の計算を間違える。

ちょっとしたことでも感情が不安定になり、怒りっぽくなった。

相手の意見を聞こうとしなくなった。

■症状の変化

アルツハイマー型認知症は、時間とともに症状が悪化していきます。変化の速さには個人差がありますが、約8〜10年かけて進行すると考えられています。

■初期
最近の出来事に関するもの忘れが多くなります。電話の取次ぎや内容などを伝達できなくなるなど、数分前のことを忘れたり、新しいことを覚えにくくなったりします。ただし、遠い昔の記憶や、ほんの数十秒前の記憶は失われません。
行動が大雑把になり、判断力が低下して、買い物で同じものを買ってくるなどの失敗が見られることもあります。
根気がなくなり、うつ症状が現れることもあります。
食事・入浴・トイレなどの基本的な日常動作はこなすことができます。これらの症状は2〜3年続きます。

■中期
発症して3年くらい経過すると、時間だけでなく場所が分からなくなってきます。洋服を着たりお風呂に入ったりする動作にも、段々と支障がでてきます。
また、お金の計算が出来なくなったり、外出する時に季節にあった服装を選択できなくなったりします。また、薬を一人で管理して飲むことが困難になってきます。
徘徊(はいかい)して迷子になることもあります。

■後期
発症して8〜9年くらい経過すると、家族が分からなくなってきます。
自分自身で服が着られなくなるほか、トイレの場所が分からなくなって失禁するなど、日常生活が困難になります。全面的な介助が必要となってきます。
転ぶことも多くなり、体力低下から寝たきりの生活となります。全身衰弱するほか、食べ物がうまく飲み込めずに気管に入ると、肺炎(誤嚥性肺炎:ごえんせいはいえん)などの感染症にかかって亡くなる場合もあります。

■症状の分類

また症状には、アルツハイマー型認知症の患者すべてにおいて見られる中核症状と、一人ひとりの性格・環境・人間関係などの原因が絡んででてくる周辺症状との2種類があります。

【中核症状】
アルツハイマー型認知症の方に必ず見られる症状です。

記憶障害 新しい情報を覚えることができない(記銘力障害)。
以前に記憶した情報を覚えておくことができない(保持障害)。
以前に記憶した情報を思い出せない(追想障害)。
見当識障害
(けんとうしき
しょうがい)
見当識(現在の時間・場所など基本的な状況を把握すること)がなくなる。すなわち、時間や場所などの感覚が薄れる。
周囲の人物と自分との関係が分からなくなる。
実行機能障害 前もって計画を立てたり、手順を考えて実行したりすることができなくなる。手順を間違える。
失行
(しっこう)
運動障害はないのに、目的に合った行動がとれない。
例) 季節にあった服装が選択できない。
失認
(しつにん)
視力・聴力の障害はないのに、見たもの・聞いたものが分からない。
失語
(しつご)
言葉が出にくい。物の名前が出てこない。
他人の話についていけない。

【周辺症状】
必ず見られるとは限りませんが、中核症状に伴って起こる症状です。住まいや家族環境などの環境変化・一時的な身体状況の変化によって起こる場合もあります。

幻覚 幻視:いない人が見える。
幻聴:他人には聞こえない声がきこえる。
妄想 例) もの盗られ妄想:
大事なもの(財布など)をしまい忘れたり、盗られまいといつもと違う場所にしまった後その場所を忘れたりして、誰かに盗まれたように被害妄想を抱く。
例) 夫の浮気を疑って嫉妬妄想を抱く。
抑うつ 将来に望みが持てなくなって気分が落ち込み、やる気が出なくなったり、思考が遅くなったりする。
睡眠障害
昼夜逆転
病状の進行とともに夜間の睡眠が難しくなる。
日中にうたた寝をして、余計に夜間に睡眠がとれなくなる。
異食・過食 食べられないものを口の中に入れる。
食事をしても空腹を訴える。
徘徊
(はいかい)
普段通り慣れた道でも迷い、行方不明になる。
目的もなく出歩く。
不安・寂しさ・恐怖から落ち着く場所を求めて動き回る。
暴言・暴動 行動を注意されたり、自身の理解のできない周囲の状態に遭遇したりすると、攻撃的になる。
介護への抵抗
不潔行為
入浴を嫌がったり、服の着替えを嫌ったりする。
うまく動作できないことへの不安などから生じる。
不安・焦燥
(しょうそう)
自身で認知症の意識はないが、物忘れが激しくなったり、今までできていたことができなくなったりするために、不安・焦燥などがあらわれる。
依存 不安感で落ち着かないが、一人でいるとさらに不安で落ち着かず、一人ではいられない。


◇ 治療について

現段階の医学では、アルツハイマー型認知症を根本的に治療することはできません。精神機能の回復も望めません。しかし、認知症の進行を遅らせることや、症状の改善をはかることは可能です。今ある機能をできるだけ長くもたせる治療が行われます。
また、認知症患者が糖尿病・肺気腫・心不全などを患っている場合、認知症が悪化することがあります。これらの病気の治療を行うことで、症状が回復する患者もいることが分かっています。

アルツハイマー型認知症そのものの治療には、薬物療法と非薬物療法があります。

■薬物療法

薬物療法としては、誰にでも必ず見られる中核症状に対して行うものと、人によって見られる症状が異なる周辺症状に対して行うものがあります。

A.中核症状に対する薬剤
必ず見られる症状に対しては、
アリセプト(成分名は塩酸ドネペジル)が用いられます。日本で唯一承認されている薬です。軽度から中等度の患者に、できるだけ早い時期に用いるほど、効果が期待できると考えられています。
アルツハイマー型認知症の脳では、アセチルコリンという化学物質が特に不足していることが分かっています。アセチルコリンは、神経細胞と神経細胞の間で情報を伝達する役割を担っています。情報を伝達し終えると、アセチルコリンエステラーゼという酵素によって分解されてなくなります。アリセプトは、アセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼの働きを邪魔することで、不足している脳内のアセチルコリンを増やし、一時的ですが機能の改善をはかります。ただし、認知症の進行を多少遅らせることはできても、進行を止める効果はありません。
もともと錠剤として3mg錠と5mg錠の2種類がありましたが、最近10mg錠が発売されました。10mg錠は、今まで効果が認められなかった重症のアルツハイマー型認知症にも効果があることが確認されています。
食欲の低下・吐き気・嘔吐や怒りっぽくなるなどの副作用があらわれることがあるため、薬に慣れるよう、段階的に量を調整した処方がなされます。
 
B.周辺症状に対する薬剤
焦燥・興奮・幻覚・攻撃性などには
抗精神病薬が、不安・いらだちなどに対しては抗不安薬、不眠・昼夜の逆転に対しては睡眠薬などが処方されます。
また最近では、抗精神病薬・抗不安薬などと比べて副作用が少ないという点で、
抑肝散(よくかんさん)などの漢方処方が注目を浴びています。抑肝散は、周辺症状である興奮や焦燥感を改善するといわれています。

■非薬物療法

症状にあわせて、薬剤を使用しないで行う心理的な治療法です。
本人が若かった頃に流行っていた懐メロをカラオケで歌ったりする音楽療法や、本人を中心とした環境で昔話をする回想療法、その季節にあった行事などをする現実見当識療法など様々なものがあります。



◇ 認知症の悪化を予防するために

環境を整える

慣れた環境にいることは、精神的な安定をもたらします。また、照明を明るくすることも効果的です。

よくかんで食べる

食べ物をかむと、その刺激が脳に伝わり、脳が活性化することが分かっています。やわらかい食べ物であっても、かむ回数を増やすようにしましょう。
また、カロテンを多く含む緑黄色野菜、ビタミンC・ビタミンEを多く含む果物や、DHA・EPAを多く含む青魚をとるようにしましょう。動脈硬化を防ぎ、細胞の老化を防ぐことで、脳を若く保つ効果が期待できます。

趣味をもつ

何も趣味が無い人は、趣味を持っている人の約3倍認知症になりやすいというデータがあるようです。好きなことや得意なことなど、楽しいことをして脳を活性化させましょう。

身の回りのできることは自分でする

なんでもかいがいしく身の回りの世話をしてあげることは逆効果です。自分の身の回りのことはできるだけ自分でするようにしてもらいましょう。ストレスの少ない単純な行動を、毎日規則正しく行うことで、本人は自立していると感じることができます。ただし、できなくなったことを無理やりさせてはいけません。自尊心が傷つけられる恐れがあります。

禁酒する

飲酒は、適量であったとしても、認知症の症状を悪化させるおそれがあります。長期的な症状の改善のためにも、禁酒することをおすすめします。



まとめ

いまや日本の高齢社会では、認知症の問題は避けて通ることができません。近年、高齢者世代と若い世代との同居が減り、より病気の発見が遅れる事態となっています。「認認介護」という言葉どおり、介護をされる人もする人も認知症である場合も少なくありません。
早期発見により適切な治療を受けることで、認知症の進行を緩やかにするだけでなく、世話をする人の負担も軽くなります。そのためにも、認知症に対する正しい認識を周りの人が持ち合わせ、落ち着いた環境で接することが必要だといえます。少しでもおかしいなと思い当たる節があるのであれば、一度医療機関にかかることをおすすめします。
アルバ薬局  新長田店
管理薬剤師  松葉 穣一


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